米国、韓国、北朝鮮の3首脳が2019年6月30日に板門店に一堂に会してから1か月も経たないうちに、北朝鮮は韓国への強硬姿勢を鮮明にしている。
北朝鮮は7月25日朝、2か月半ぶりに短距離弾道ミサイルを発射。今回のミサイルが「新型」だと明らかにした上で、韓国を名指しして「厳重な警告を送るための武力示威の一環」だと主張している。再開することで合意したはずの米国との非核化協議の見通しが立たない中、8月に予定されている米韓合同軍事演習に神経をとがらせている。
「南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告」
韓国の合同参謀本部の発表によると、ミサイルは東部の元山付近から2発発射された。1発目は5時34分、2発目は5時57分に発射。それぞれ430キロ、690キロ飛行して日本海上に落下したとみられる。高度は50キロ程度だったと推定されている。これに加えて、韓国政府は「新型の短距離弾道ミサイル」だとする分析結果を発表している。
北朝鮮がミサイルを発射するのは5月以来、約2か月半ぶり。5月は4日に「東部前線防御部隊」で「大口径長距離ロケット砲と戦術誘導兵器」、9日に「西部前線防御部隊」で「複数の長距離打撃手段」を使用したとしており、特定国の名指しは避けていた。
だが、7月26日に北朝鮮の国営メディアが報じたところによると、今回のミサイル発射では、金正恩・朝鮮労働党委員長が「新型戦術誘導兵器の威力示威射撃を策定、指導」したという。記事では、発射の背景を
「われわれの重なる警告にもかかわらず南朝鮮(編注:韓国)地域に先端攻撃型兵器を搬入して軍事演習を強行しようと熱を上げている南朝鮮軍部好戦勢力に厳重な警告を送るための武力示威の一環」
だと説明している。
金正恩氏も韓国批判を強めるが...
正恩氏は、
「防御することが容易でない戦術誘導弾の低高度滑空跳躍型飛行軌道の特性とその戦闘的威力に対して直接確認し、確信できるようになったことを満足に思う」
などと発射を評価した上で、韓国に対する非難を繰り返したという。
「南朝鮮の当局者らが世界の人々の前では『平和の握手』を演出して共同宣言や合意書のような文書をいじり、振り返っては最新攻撃型兵器の搬入と合同軍事演習の強行のような変なことをする二重的振る舞いを見せている」
「われわれはやむをえず南方に存在するわが国家安全の潜在的、直接的脅威を取り除くための超強力兵器システムを力強く開発していかなければならない」
今回の北朝鮮の発表では、米国の名指しは避けているものの、韓国と米国が8月5日から23日にかけて予定している合同軍事演習を警戒しているとみられる。
韓国メディアによると、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は8月2日にバンコクで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議に参加しない見通しだ。ARFは北朝鮮の外相が例年出席する数少ない国際会議。板門店で米朝が合意した「2~3週間以内の実務者協議開催」の実現が難しいとみられる中で、米朝外相会談が行われれば事態打開のきっかけになるとの見方も出ていた。ミサイル発射や外相のARF出席取りやめで、米国への揺さぶりを強めている可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)