地方銀行最大手の横浜銀行と3位の千葉銀行が合意した業務提携。これまで地銀の再編のほとんどは「救済型」だったが、今回は、人口が集中する首都圏を地盤に、全国の地銀でも規模・収益ともにトップ級同士が手を結ぶ大型提携だ。「営業面で互いに取引先を紹介し合うのが柱になる。
「強者連合」とも、「勝ち組連合」とも称せられる今回の提携。全国の地銀再編に刺激を与えそうだ。
東京に「攻め込む」タッグ
横浜銀の大矢恭好、千葉銀の佐久間英利の両頭取は2019年7月10日、東京都内で記者会見して提携を発表。大矢氏は「首都圏にある両行は事業戦略が似通い親和性が高い。3桁億円の効果を生み出したい」と述べ、佐久間氏も「取引先を紹介し合い顧客基盤を拡充したい」と応じた。
今回の提携は、法人向けでは合併・買収(M&A)や中小企業が悩む後継者問題のほか、ビジネスマッチング、新規ビジネスの創出などで取引先を紹介し合う。信用調査会社の東京商工リサーチによると、国内151万4056社(2018年3月末時点)のうち、横浜銀をメインバンクとする企業数は約1万8000社、千葉銀は、約2万2000社で、単純に合算すると約4万社に達し、りそな銀行(3万7000社)を上回り、3メガバンクに次ぐ。この分厚い顧客基盤が提携の最大のセールスポイントだ。両行はそれぞれ神奈川県と千葉県に多店舗を展開し、営業エリアとして競合が少なく、補完関係が見込めることも、提携を後押しした。会見場所が東京だったように、東京に東西から攻め込む形になる。
海外拠点は千葉銀がニューヨークやロンドン、横浜銀が上海に支店を設けており、顧客の海外進出支援のサポートでも、補完関係を発揮できる。
個人向けでは成長性がある相続関連業務での協力が柱で、具体的には千葉銀が強みを持つ遺言などの信託サービスを横浜銀の顧客に提供することなどが有力視される。個人向け運用商品の共同開発なども検討する。
異業種の参入が相次ぐフィンテックなどデジタル分野でも連携する。勘定システムの研究開発も共同で進めていくという。