1年後の2019年7月下旬から開催される東京五輪に向け、侍ジャパンで注目の一つに挙げられるのが正捕手争いだ。広島・会沢翼、巨人・小林誠司、阪神・梅野隆太郎ら好捕手がいるが、正捕手に最も近い存在として、西武・森友哉、ソフトバンク・甲斐拓也の2人の名が挙がる。
パ・リーグのあるスコアラーは「投手との相性もあるでしょうが、侍ジャパンがどう戦うで選択肢が変わってくるでしょう。守備型の布陣だったら強肩が武器の甲斐、捕手にも打力を求めるならクリーンアップを担う力がある森になる。森を指名打者で使う選択肢もありますが、稲葉監督の手腕が見どころですね」。
「雑草」か「エリート」か...経歴は対照的
森の打撃センスは球界屈指だ。今季は打率.315、8本塁打。首位打者を争う高打率でパンチ力もある。大型捕手として期待されたが、課題は守備だった。入団してから数年間は投手からの信頼が厚い炭谷銀仁朗(現巨人)が正捕手でマスクをかぶる機会が多く、森は打力を生かして外野手で起用されていた。
本職の捕手で株を大きく上げたのが昨年だった。捕手としてチーム最多の81試合出場し、ベストナインを獲得。盗塁阻止率.373はソフトバンクの甲斐、高谷裕亮に次ぐリーグ3位だった。攻守の大黒柱として10年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献し、「陰のMVP」と形容される活躍ぶりだった。
一方、甲斐も負けていない。昨年の盗塁阻止率.447はリーグ断トツトップ。広島との日本シリーズではシリーズ新記録の6連続盗塁阻止で相手の機動力を封じ込め、育成出身の選手で初のMVPを受賞した。捕球からの素早いスローイングと的確な送球、群を抜いた強肩から名付けられた「甲斐キャノン」は大きな武器だ。課題の打撃でも成長の跡を見せている。今季は打率.252、9本塁打。ツボにはまればフェンスを越える長打力で森より本塁打数は多い。
26歳の甲斐は楊志館で甲子園出場経験がなく、10年育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。一方、23歳の森は2年時に春夏連覇を達成するなど甲子園に4度出場し、13年ドラフト1位で西武に入団した。その球歴は対照的で、いわば「雑草とエリート」の戦いだ。1年後の東京五輪で、どちらが侍ジャパンの扇の要になるのか注目される。