「布施改革」とその結果
「変革」――そう述べたとおり、15年に就任した布施社長は大胆な改革を実行してきた。自ら現場を巡回する中で、目先の利益や会社都合の判断が多いこと、本社と現場の関係が良くないこと、これらが絡み合って統一した戦略がないことを痛感。組織として見ている先が、必ずしも「お客様」ではなかったのである。
最も変わった組織はマーケティング部門だ。布施社長は外資系企業で辣腕を振るっていた山形光晴氏の能力を買い、41歳の若さで同部部長を任せた。社内の慣習にとらわれず「お客様」を第一に考える姿勢もマッチした。結果、上層部の意向に左右されず、主語に「お客様」を据えてニーズをつかもうとする姿勢、過去の失敗と真摯に向き合い学ぶ風土、現場を知る営業部とのコミュニケーション増につながる。
お客様はビールに何を求めているのか――? 原点回帰とも言えるこの疑問にもう一度正面から向き合った。そして、マーケティング調査や営業の中で見えてきたのは、ビールカテゴリーに求められる価値は「おいしさ」だということだった。