商業ビル大手、パルコの株式が上昇基調にある。2019年7月4日には年初来高値を更新し、その後も東日本の天候不順という逆風下でも値崩れせず高値圏を維持している。足元の業績が堅調な中、11月下旬に3年ぶりにリニューアルオープンする旗艦店「渋谷パルコ」(東京都渋谷区)など、成長を期待させる材料が多いことが背景にある。
パルコが7月2日に発表した6月の「テナント取扱高」(パルコ店舗におけるテナント取扱高の合計値)は、既存店ベースが前年同月比1.7%増と、2月から5か月連続のプラスで着地した。梅雨寒の影響で水着やビアガーデンが振るわなかったが、積極的に導入を進めている化粧品や食関連ショップのほか、映画が好調だった。
スクラップ&ビルド
こうした材料が後押しし、パルコ株は6月28日から5営業日連続で終値が前日比で上昇した。5連投目の7月4日には一時前日終値比3.7%(43円)高の1215円まで上昇し、年初来高値を更新した。
パルコは、「松坂屋」「大丸」を擁する百貨店グループ、J.フロント リテイリングが議決権の65%を握る親会社でJ.フロントの一員でもある。J.フロントが7月16日に発表した6月の連結売上収益(売上高)は、前年同月比6.6%減(百貨店事業は2.8%減)とふるわず、J.フロント株は17日の東京株式市場で終値が前日比1.6%(20円)安の1267円と下落した。
しかし、グループの一員でもあるパルコの株式は2円高の1191円とわずかながらもプラスだった。J.フロントの6月の連結売上収益においてパルコ事業は8.1%減と発表されていたのだが、「前年に大型受注があった反動減」との会社側の説明が投資家に納得されたようだ。一方、百貨店事業については、東日本で晴れ間が少なく低温続きだった影響で夏物衣料などが低調だった影響が出ており(パルコにもそれは出てはいるが)、投資家に警戒感を与えたとみられる。
パルコは店舗のスクラップ&ビルドを進めており、「千葉パルコ」(千葉市)、「宇都宮パルコ」(宇都宮市)、「熊本パルコ」(熊本市)といった、地方ないし郊外の不採算店を閉店(熊本は2020年2月予定)する一方、19年3月には「錦糸町パルコ」(東京都墨田区)を「楽天地ビル」に開店。11月下旬に旗艦店の渋谷パルコを再開業するほか、21年春をめどに訪日外国人で沸く大丸心斎橋店(大阪市)北館に入居する。また、沖縄県浦添市で6月下旬、地元スーパーのサンエーと共同出資で大型商業施設「サンエー浦添西海岸パルコシティ」を開業。都心部の中低層商業施設「ゼロゲート」も8月に11店舗目を川崎市(旧さいか屋跡)でオープンする。従来の日本の小売業がさまざまな壁に直面する中にあってパルコは着実に再成長軌道に乗り始めていると言えそうだ。