「『増税反対』でも『辞めろ』でも、警察が介入して排除することではない」
元道警警視長で選挙対応の責任者を歴任してきた原田宏二氏は、J-CASTニュースの取材に「今回の警察の行為は法的な根拠を欠き、違法だと思います」と話す。
「映像を見る限り、野次をしていた人の脇を両側から抱え、複数人で連れ出したと見え、明らかに強制力を行使していると思います。このようなケースで考えられる警察の強制力は、警察官職務執行法5条が定める犯罪予防のための警告・制止です。これに該当する状況だったかを考えてみます。
『警告』は一般的には口頭で行います。『制止』は現場の状況に応じて必要な程度の実力を使うことも許されますが、それも人の生命・身体に危害が及ぶような緊急時にすることができます。しかし、本件はそのよう状況にあったとは思えません。だとすると、法的根拠がないままに強制力を行使したことになり、違法だろうと思います」
複数の県警で捜査二課長(選挙違反の取り締まりなどを所管)をつとめたほか、警察署長や方面本部長などの立場でも選挙違反事件を指揮してきた原田氏は、自身の経験に照らして「選挙演説をしているのが与党か野党か以前に、警察がこのような監視や取り締まりをするべきではない」とする。
「地元警察は演説場所周辺で安倍氏に対する万が一の攻撃に備えて警護をしているはずです。しかし、今回のケースは市民が凶器を持ち出していたわけでもなく、スピーカーなどで大音量を出して演説を止めようとしていたわけでもありません。個人的な野次のようです。
直接見る機会が滅多にない自民党総裁の演説を聞きに集まり、日頃考えていることを叫ぶのは、広い意味で有権者に許された政治活動・選挙活動の一環だと私は思います。『増税反対』でも『憲法改正反対』でも『辞めろ』でも、警察が介入して実力で排除することではありません。そうした野次すら言ってはいけないのであれば、民主主義は成立しない。民主警察のやることではありません」