韓国大法院(最高裁)が三菱重工業など日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を下した問題で原告側弁護団は2019年7月16日、すでに差し押さえ済みの三菱重工業の韓国内資産の売却命令を出すように裁判所に申請し、現金化の手続きを進める方針を明らかにした。
日本政府は「日本企業に実害が及ぶようなことがあれば、必要な措置を講じなければならなくなると思っている」(7月16日、河野太郎外相)と繰り返す。判決が日韓関係の「法的基盤を根本から覆すもの」だという点に加えて、この「実害」の大きさも焦点になりそうだ。
英文略称のロゴとガスタービン関連の特許が...
原告側は被告の三菱重工業に対して賠償に関する協議に応じるように求めていたが、三菱側は回答期限の7月15日までに回答に応じなかった。そのため、弁護団は「被害者が90歳を超えた高齢で、法手続きを遅らせることができない」などとして現金化の手続きを早期に始めることを表明した。
現金化の対象になるのは、大田(テジョン)地裁が19年3月に差し押さえていた商標権2件と特許権6件で、総額約7300万円。韓国の通信社「ニュース1」によると、差し押さえられた中には
「『三菱重工業』(MHI)『三菱重工業グループ』(MHI Group)の英文略称を用いた会社のロゴとガスタービン関連の特許など」
が含まれている。仮にこれらが現金化された場合、これらのロゴマークが韓国で使えなくなるほか、発電所にガスタービンを納入する際に影響がでる可能性がある。なお、三菱グループを代表する、いわゆる「スリーダイヤ」のロゴマークは差し押さえの対象外だという。
手続きには時間はかかるが...
原告団が現金化に向けた手続きを取るのは、日本製鉄、不二越に続いて3社目。それぞれ、現地との合弁会社の株式約9300万円相当、7300万円相当が差し押さえられている。日本製鉄、不二越の両社については現金化の手続きを5月に始めたが、被告企業への尋問手続きなどに時間がかかるため、7~8か月かかるとみられている。
日本政府は、日韓請求権協定に基づく協議を求めているが、韓国は応じないままだ。日本政府は仲裁委員を任命する第三国の選定を韓国に求めているが、7月18日の期限までに、韓国政府は何の返答もしなかった。このまま裁判所が売却命令を出すという「実害」が発生すれば、日本政府は損害賠償請求などの「必要な措置」を迫られることになる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)