投票所入場券の性別記載削除などを求め、宮城県女川町のトランスジェンダーの当事者が署名サイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で呼び掛けている。
今回の署名を呼び掛けているのは、女川町に住む団体職員の堀みのりさん(29)。投票所入場券の記載事項については特段の規定はなく、性別の記載の有無は自治体によって対応が分かれている。J-CASTニュースでは、堀さん本人に話を聞いた。
受付の係員にひそひそ話されることも
堀さんは21歳のころから男性ホルモンの注入を始めた。現在も定期的に続けている。
子どものころから「ジェンダー規範とはちょっと違った言動をしていた」と話す堀さん。夏の五輪でマラソン競技を見ていた、小学5年生のころ。偶然にもその日は授業参観があり、親と帰る際に「走ってから帰る」と伝え、家の周囲を走って帰ってきた。その時、途中で上半身の服を脱いで帰った。「テレビで脱いで帰ってくる姿が気持ちよさそうだなとか、かっこいいなと思ってやったことだとは思うが、当時の自分はなんで怒られるのかわからなかった」。
大学入学後、サークルの自己紹介で「堀です」と言った時、とある先輩から「『くん』、『さん』どちらですか」などと言われ、「『くん』と言いたいけど、『さん』と言わなきゃいけない」という葛藤を抱えたことも。「大学の図書館で1人見つからないように調べて、性同一性障害やトランスジェンダーという言葉を知った」。とあるテレビで当事者の特集を見て、「自分と同じだとすごく思っ」たという。
堀さんは署名サイトで、「選挙に毎回欠かさず投票をさせて頂いています」としつつも、「選挙のたびに苦しい思いもしてきました」とつづる。堀さんは取材に対し、
「女と書かれたものを持っていくのはすごく、不安や緊張は強かったりしました。実際に何度か(投票所で)『ご本人ですか』と確認されたり、受付を通った後に後ろの方で、『あの人女性なんだ』『男じゃないの』みたいなことを受付の人に言われたりしたこともありました」
と振り返った。
署名活動は7月8日に始めた。集まった署名は16日9時時点で、2558筆。この日、女川町長、女川町議会議長、女川町選挙管理委員会委員長宛に、集まった署名と投票所入場券の記載事項見直しや不要な情報の削除などを求めた要望書を手渡した。前日の15日、堀さんはJ-CASTニュースの取材に「ボトムアップも含めて身近な問題として、すぐ直近で必要なところは投票時の対応。選挙が行われる間はまずは女川に提出する」と話していた。今後、集まった署名は総務省にも持っていく予定だ。
女川町「実際に本人かどうか確認するため」
投票所入場券については公職選挙法施行令の31条で定められているが、記載事項について特段、規定はない。総務省選挙課の担当者は16日、J-CASTニュースの取材に対し、「投票所入場券における氏名や性別の記載事項については各市区町村の選管で判断されている」としつつも、
「平成28(2016)年4月に施行された『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律』(障害者差別解消法)を踏まえ、選挙ごとに『選挙の公正の確保に留意しながら、記載事項の必要性や表現については検討すること』という趣旨の通知は都道府県選管宛に出している」
と説明する。
女川町選挙管理委員会の担当者は16日、J-CASTニュースの取材に「実際に本人かどうか確認するために(性別を)記載してある。入場券を世帯ごとに送付させていただいているが、たまに間違って奥さんのものを持ってきたり、旦那さんのものを持ってきたりして、そこで気づかれる方もいる。そういう部分のチェックとして、実際に選挙権を持っている方に投票所に入場してもらうようにするところで、もともと(性別は)入っている」と説明した。
一方、同じ宮城県でも仙台市では、2004年の参議院選挙から性別記載をなくしている。投票所入場券の性別欄記載をめぐっては、自治体で対応が分かれているのが現状だ。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)