「お前騒動」で失った求心力... 与田監督は取り戻すことができるのか

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   異常な光景だった。2019年7月12日の球宴1戦目(東京ドーム)。巨人・坂本勇人の打席で応援歌が流れる。

   「誰よりも強く勇ましく、オオオオオオ、お前が立つその場所は熱気の渦が巻く 坂本!炎となれ」。普段と違い、セ・パ両球団のファンが「お前」の部分を強調してシャウトしたためどよめきが起きた。明らかに、12球団のファンが中日・与田剛監督への「抗議」を示したパフォーマンスだった。

  • ナゴヤドームにあの歌が再び響く日は…(イメージ)
    ナゴヤドームにあの歌が再び響く日は…(イメージ)
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ファンだけでなく、選手も巻き込まれる

   与田監督も騒動がここまで大きくなるとは想定していなかっただろう。14年からチャンステーマに使っていた応援歌「サウスポー」の替え歌で、「お前が打たなきゃ誰が打つ」の部分に、指揮官が子供の教育上の観点から「お前より(選手の)名前がいい」と、球団を通じて公式応援団に変更を要請したのが事の始まりだった。今月1日に中日の公式応援団が「不適切なフレーズがあるというご指摘を受けました」とチャンステーマの自粛をSNS上で発表すると、中日球団に批判の声が殺到した。

   与田監督にしてみれば、応援歌の自粛を望んだのではなく、「お前」の部分の変更だけを求めていただけかもしれない。ただ、公式応援団は球団からの通達を受け、「自粛するべき」と捉えたのだろう。

   この騒動の被害者はファンだけでない。選手も巻き込まれたことだ。グラウンドでプレーしている選手たちは応援歌で「おまえ」と声援を送られることに何も不快感を持っていない。反響が日に日に大きくなり、球界を超えてワイドショーでも取り上げられる事態に。7日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で、柳裕也が8回1失点に抑えてリーグトップタイの9勝目を飾ると、お立ち台で「最近、色々あると思うんですけど......。今日の勝ちをきっかけにチームとファンで一つになって頑張りましょう」と「お前騒動」の鎮静化を呼び掛けたほどだった。

「なぜ与田監督が変更を求めるのか理解できない」

   他球団の応援歌を見渡せば、「くたばれ」など過激なフレーズが珍しくない。中日ファン31年歴という都内在住の会社員・今中隆さん(40)は「おまえというフレーズは中日の応援歌でずっと使われてきたし、なぜ与田監督が変更を求めるのか理解できない。僕や周りの中日ファンは『言葉狩り』に近い感覚で受け止めています。こっちは選手を全力で応援したいけど、熱が入らないですよね」と複雑な表情を浮かべる。

   与田監督は思わぬ形でファンから失った求心力を取り戻すためにも、グラウンドで白星を積み重ねるしかない。

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