横浜F・マリノス対浦和レッズ戦(2019年7月13日、日産スタジアム)の後半14分に起きた「誤審」騒動が尾を引いている。判定そのものの二転三転ぶりに加え、各メディアで報道された松尾一主審の発言内容にも注目が集まっている。
問題のシーンと一連の報道を、専門家はどう考えるか。審判員資格の取得経験があるサッカージャーナリストで、Jリーグ審判の舞台裏を追ったドキュメントDVD『審判 -ピッチ上の、もう一つのチーム-』をプロデュースした石井紘人氏(@targma_fbrj)に寄稿してもらった。
「運営が決める」発言はあったのか
先週末、とある報道がサッカー界を混乱させた。
それはJ1第19節、横浜Fマリノス×浦和レッズ戦の二点目となった横浜・仲川輝人のゴールが二転三転したプロセスについてである。
16日に配信された「Jリーグジャッジリプレイ」で日本サッカー協会(JFA)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャーが明かした判定をめぐる顛末はこうだった。
まず、主審とA2副審(浦和陣地側を見ていた副審)は仲川と競っていた浦和・宇賀神友弥のオウンゴールの可能性が高いと認識してしまい、本来は仲川のオフサイドなのだが、オウンゴールと判定してしまった。
当然、浦和選手たちが猛抗議する中、A1副審(横浜陣地側を見ていた副審)と第四の審判員の元に「仲川のゴール」という情報が運営から入る。それをA1副審と第四の審判員が一度は主審に伝え、ゴールが取り消され、オフサイドとなった。
しかし、運営からの情報で判定を変えることは許されていない。それは判定ミスではなく、ルールの適用ミスで再試合となる危険性もはらんでいる。その点を再度審判団で協議し、運営からの情報が入る前の判定、ゴールのまま試合を進めることを両監督に伝えた。そして、仲川のゴールとなったのだが、このプロセスを試合直後の段階では、スポーツ紙だけでなく、専門紙まで誤って報道してしまう。
「(仲川のゴールについて)主審が判定は運営が決めていると不可解発言」と報じたのだ。
だが、「Jリーグジャッジリプレイ」で上川氏が明かしたように、そのような発言は一切なかった。