楽天モバイルが、DMM.comの運営する「DMM mobile」を事業買収すると発表した。このサービスはMVNO(仮想移動体通信事業者)で、いわゆる「格安SIM」と呼ばれるものだ。
楽天モバイルも、現状では他社回線を借りるMVNOだが、2019年10月からは自ら基地局を持ち、自社回線でサービス提供する予定。NTTドコモ、ソフトバンク、au(KDDI)に並ぶ「4大キャリア」の仲間入りを目指すうえでの買収だが、従来のDMM mobileユーザーには、どんな変化が考えられるのだろうか。
約24万回線が、新たなユーザーになる
DMM mobileは14年12月開始、契約数は約24万回線(19年6月末時点)。ドコモ回線を使っているが、インターネットイニシアティブ(IIJ)がドコモから帯域を借り、DMMに提供するという、いわゆる「又貸し」のような形態だ。
楽天とDMMの発表(7月9日)によると、9月1日の事業譲渡後もサービスの名称や内容、利用料金などは当面変わらない。その一方でDMM mobileでは現在、DMMグループの各サービス(動画配信サービスのFANZAなど)で使えるポイントを付与しているが、これは9月1日以降、楽天スーパーポイントの付与に切り替わる予定だとしている。
楽天モバイルは14年10月にスタート。ドコモ回線を利用しているが、18年10月からはau回線でのサービスも始めた。その一方で、楽天は17年12月、自前での回線を持つ方針を発表。18年4月に総務省から1.7GHz帯の周波数割り当てが決まり、19年10月のサービス開始に向けて、基地局の整備を進めている段階だ。
旧FREETELプランは、ほぼ継続しているが...
楽天モバイルは、DMM以前にも、他社の格安SIM事業を引き継いでいる。プラスワン・マーケティング(POM)の「FREETEL SIM(フリーテルシム)」だ。POMは15年7月、FREETELブランドでのMVNO事業を開始。一時は佐々木希さんを起用した「月額299円(ニクキュー)」のテレビCMなどで攻勢をかけたが、経営悪化により17年11月に楽天へ事業譲渡された。その後、楽天モバイルにブランド統合されたが、旧FREETELユーザーは、おおむね大きく変わらないプランを継続利用できている。
この前例を見ていると、DMM mobileのプランもしばらく維持されそうだが、両者にはいくつか違いがある。簡単に言うと、事情が異なるのだ。まずは、IIJを挟んでいるDMMと違い、旧FREETELが直接ドコモ回線に接続していたこと。もうひとつは、楽天モバイルが自社回線でのサービス開始に合わせて、MVNO事業を大幅縮小する可能性だ。
辞書で「当面」を引くと、「いま直面していること。さしあたり」(広辞苑第7版)とある。いつまで旧サービスを継続するかは、楽天の腹次第だ。かつてFREETELを使い、現在もDMM mobile回線を持っている筆者も気が気ではない。
(J-CASTニュース編集部 城戸譲)