教習受けていたのに...とっさに「分からない」
帝産湖南交通の担当者は8日、J-CASTニュースの取材に答え、松波さんらの指摘を受けて当時の運転士に聞き取りしたとして、その結果を明かした。まず、松波さんと酒井さんが上記の通り指摘していた運転士の一連の言動に「間違いはない」と認めている。
一方、当時のバス状況についてはこう話す。
「12時1分発のバスが乗り場に乗りつけた時点で、今回の車いすの方々は乗り場におりませんでした。普段、車いすのお客様がご利用になる時は、他のお客様には一旦待っていただいて、先に車いすの方に乗車してもらいます。ただ今回は、他のお客様が乗車してから車いすユーザーの方々が来ました。また、運転士は車いすユーザーの方が乗車できるスペースも空いていなかったと話しています。
そこで運転士は、ノンステップ・ワンステップバス時刻表を見せて、次のバスに乗るようにと説明しました。しかし、当該バスもワンステップバスだったのに、運転士が『このバスには乗れない』『スロープの出し入れの操作が分からない』と言ってしまったのは事実です。不適切な言い方だったと運転士本人も認めています。乗車済みのお客様を一旦降ろしてもう1回乗っていただくのは困難だという旨も含め、丁寧に伝えるべきでした。受け答えや説明が適切ではなかったと、お客様には謝罪させていただきました」
スロープの出し入れについては、「実際は当社のすべての運転士が教習を受けて習得しています」というが、今回の運転士はとっさに「分からない」と言ってしまったという。担当者は「出発時刻の12時01分が過ぎている中での対応となり、焦りもあったかもしれません。運転士には指導していきます」と話す。
そもそも、この「ノンステップ・ワンステップバス時刻表」は約7年前に作成されたものを使い続けている。作成当時はノンステップ・ワンステップバスと、そうでないバスとが半々くらいの割合で運行していたが、19年現在は前者の比率が8割ほどに増加している。そのため、同時刻表に記載のないダイヤのバスでも、車いすで乗車できるものがある。だが、同時刻表を実態に合わせて改定しておらず、杓子定規に古いままの同時刻表に則った対応をしてしまっているという。担当者は同時刻表の改定と、運転士への周知、教育を図るとともに、今後もノンステップ・ワンステップバスの割合を増やしていくと答えた。
2016年に施行した障害者差別解消法では、障害を理由としてサービスの提供を拒否・制限したり、利用に条件をつけたりする行為は不当な差別的取り扱いにあたるとして禁じている。また民間事業者は、障害者の社会的な障壁を取り除くための合理的な配慮を行うよう努めなければならない。
同法を背景に国土交通省が示した指針では、バス事業者に対し、過重な負担とならない範囲で提供するのが望ましいこととして(1)バスにスロープや車いす固定装置の整備・点検を徹底すること(2)障害者の特性を理解した上で、適切な接遇・介助ができるよう運転士を教育すること――などを定めている。
また、バリアフリー新法にもとづいて国交省が定めているバリアフリー整備ガイドラインでは、公共交通機関に設備の基準を設けており、バスの場合は低床バス(ノンステップバス、ワンステップバス)の導入を推進している。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)