ようやく「800億円」金策にめど、JDIの道のりはそれでもまだ険しい

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   業績不振が続く液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)だが、ようやく資金調達への道のりが見えてきた。

   2019年7月12日、中国ファンド「嘉実基金(ハーベスト・テック)」から不足していた100億円超について調達のめどが立ったとの連絡があったと発表した。6月末までに香港の投資ファンドからの出資を取り付けており、目標としていた800億円にようやく届いた格好だ。とはいえ、その道は、まだまだ険しい。

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出資取り付けるも...「条件付き」

   直近の動きを振り返ろう。

   6月末までに、出資を決めたのは香港のヘッジファンド「オアシス・マネジメント」で、最低161億円~最大193億円の金融支援を受け入れる。ただ、(1)JDIの主要顧客からパネル購入の中止や大幅な削減がないこと、(2)JDIの株価が30円を下回らないこと、(3)JDIが受ける支援総額が600億円以上になること――などを支援の条件としている。

   すでに中国ファンド「嘉実基金」も、522億円の出資を決定していた。ただ、嘉実も、中国政府当局の介入がないことなどを条件にしている。

   両ファンドは内部の機関決定を経て、支援を確約する「コミットメントレター」を出しているが、条件付きであるように、支援は最終決定ではなく、実施されるか、なお流動的となっていた。

   しかもJDIは必要資金は800億円と弾いていたが、オアシスと嘉実の2ファンドの出資を合わせても683億~705億円で、95億~117億円が、7月頭の時点ではまだ不足していたのである。

   事態が動いたのは7月12日。JDIは「嘉実基金」から、この不足分のめどが立ったとの連絡を受けたと明らかに。これで、長らくJDIを悩ませていた資金危機は、ひとまず解決への道筋がついた格好となった。

「日の丸ディスプレイ」の船出と座礁

   JDIは2012年、日立製作所、ソニー、東芝の液晶事業を政府主導で統合し、官民ファンドの旧産業革新機構(現INCJ)が2000億円を出資して誕生。「日の丸ディスプレイ」としてのスタートで、スマートフォンに使う中小型の液晶パネル市場では世界有数のシェアを持ち、2014年には株式上場も果たした。しかし、その後は中国勢などとの低価格競争で業績が悪化。2019年3月期連結決算は5年連続で最終赤字を計上し、債務超過寸前。2019年9月末にも手元資金が枯渇するリスクも指摘され、支援先を募っていた。

   支援の枠組みを巡っては紆余曲折の末、この4月に、台湾のタッチパネルメーカー「宸鴻光電科技」(TPK)、台湾の投資銀行「富邦集団」、そして嘉実の台中3社連合が普通株や新株予約権付社債(転換社債=CB)で最大計800億円を出資することで合意した。しかし、JDIの業績見通しの一段の悪化などを受けて各社が動揺。INCJが追加支援を決めて交渉を後押ししたが、TPKと富邦の2社が相次いで離脱し、嘉実+アルファの枠組みの再構築に向け交渉が進められていた。

   JDI支援にはアップルもかかわっている。アップルにとってJDIは最大の液晶調達先ということで、旧来の枠組ではTPKが予定していた251億円の支援のうち、1億ドル(107億円)相当をアップルが負担する見通しだった。今回、嘉実基金を通して同じ金額を負担する見通しという。また、JDIが白山工場(石川県)を建設した際にアップルから借り入れた約1700億円の返済条件の緩和でもアップルと合意し、四半期ごとの返済額を従来の返済計画の4分の1まで減らすことで合意した。

米中は連携できる?摩擦の行方も...

   アップルはJDIからスマートウオッチ向けに有機ELパネルの供給を受ける予定で、重要なサプライヤーとして、支援継続は必要と判断したようだ。

   今回、なんとか800億円の調達への道筋を立てたことで、ひとまずJDIは胸をなでおろしているはずだ。とはいえ上述の通り、2ファンドの出資はいずれも「条件付き」。米中貿易摩擦の先行きが見通せない中、その渦中にあるアップルと中国のファンドが絡む支援の枠組みというのも、不透明感を強めている。

   特にアップルについては、日本の携帯料金が、通信料金と端末代金に分離されることから、高価格のiPhoneは代金を通信価格に上乗せする形での販売ができなくなって売れ行きに悪影響が出るとの見方もあり、これもJDIにはマイナス要因になりかねない。 JDI再建の道のりは、なお遠く、険しい。

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