「日の丸ディスプレイ」の船出と座礁
JDIは2012年、日立製作所、ソニー、東芝の液晶事業を政府主導で統合し、官民ファンドの旧産業革新機構(現INCJ)が2000億円を出資して誕生。「日の丸ディスプレイ」としてのスタートで、スマートフォンに使う中小型の液晶パネル市場では世界有数のシェアを持ち、2014年には株式上場も果たした。しかし、その後は中国勢などとの低価格競争で業績が悪化。2019年3月期連結決算は5年連続で最終赤字を計上し、債務超過寸前。2019年9月末にも手元資金が枯渇するリスクも指摘され、支援先を募っていた。
支援の枠組みを巡っては紆余曲折の末、この4月に、台湾のタッチパネルメーカー「宸鴻光電科技」(TPK)、台湾の投資銀行「富邦集団」、そして嘉実の台中3社連合が普通株や新株予約権付社債(転換社債=CB)で最大計800億円を出資することで合意した。しかし、JDIの業績見通しの一段の悪化などを受けて各社が動揺。INCJが追加支援を決めて交渉を後押ししたが、TPKと富邦の2社が相次いで離脱し、嘉実+アルファの枠組みの再構築に向け交渉が進められていた。
JDI支援にはアップルもかかわっている。アップルにとってJDIは最大の液晶調達先ということで、旧来の枠組ではTPKが予定していた251億円の支援のうち、1億ドル(107億円)相当をアップルが負担する見通しだった。今回、嘉実基金を通して同じ金額を負担する見通しという。また、JDIが白山工場(石川県)を建設した際にアップルから借り入れた約1700億円の返済条件の緩和でもアップルと合意し、四半期ごとの返済額を従来の返済計画の4分の1まで減らすことで合意した。