日本が韓国に対する半導体などの材料3品目の輸出規制を強化したことにで、日韓は新たな火種を抱えることになった。
日本政府は否定するものの、当初は元徴用工らに賠償を命じる判決が出たことに対する「対抗措置」としての側面が強いと考えられてきた。これに加えて、輸出管理をめぐる「不適切な事案」の問題が表面化。日本が輸出した材料が北朝鮮に横流しされているとの見立てだが、韓国側は全面否定。国際機関に調査を委ねたい考えで、仮に韓国側の「無実」が明らかになれば日本側は謝罪すべきだと主張した。
日本政府は否定も肯定もせず
北朝鮮への「横流し」疑惑は、日本政府が否定も肯定もしないこともあって、くすぶり続けている。例えば安倍晋三首相は2019年7月7日にフジテレビで放送された党首討論番組で、
「北朝鮮に横流しされているという見方が(日本の)政府や与党の高官から出ている」
という司会者の指摘に対して、
「不適切な事案があったという指摘があるが、基本的には国と国の約束を守らない、ということであれば、特例的な対応をしていたものをやめる、ということだ」
などと説明。
「信頼を失ったことがメインなのか、あるいはそうした大量破壊兵器の製造などに転用されるような物質が流れたことが問題だったのか」
との問いには、
「今、この場で個別のことについて申し上げるのは差し控える」
と述べるにとどめている。
韓国側は反発している。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は7月10日に財界人と行った会合の冒頭あいさつで、今回に日本側の措置への対策を急いでいることを説明する中で、
「日本政府が政治的目的のために韓国経済に打撃を与える措置をとり、何の根拠もなく対北朝鮮制裁と結び付けた発言をすることは、両国の友好と安保関係に決して望ましくない」
などと「横流し説」を念頭に不快感を示した。
韓国側の不備が明らかになれば...
7月12日には、さらに踏み込んだ対応方針が明らかにされた。韓国メディアによると、国家安全保障会議(NSC)の金有根(キム・ユグン)事務処長は記者会見で、
「不必要な議論を中断して、日本政府の主張が事実かどうかを明確に明らかにするために、国連安全保障理事会の専門家パネルまたは適切な国際機関に、日韓両国の輸出管理体制の違反事例の公平な調査依頼を提案する」
などと発言。調査で韓国側の不備が明らかになれば「韓国政府は謝罪して是正措置を直ちに取りたい」とする一方で、韓国側に不備がないという結論が出た際は
「日本政府は、韓国政府に対する謝罪はもちろん、報復的な性格の輸出規制措置も直ちに撤回しなければならない」
とした。ただし、この提案を日本側が受け入れるかは不透明だ。
この日の午後には、日韓両政府による事務レベルの会合が経済産業省内で行われた。菅義偉官房長官は、これに先立つ午前の記者会見で、
「韓国の輸出管理当局からは、今回の運用の見直しについて事実確認を求められており、事務レベルで対応するもの。あくまでも事実確認を目的としたものであり、韓国側と協議をするようなものではない」
と説明。「協議」ではないことを強調している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)