ボクシングの元WBC世界バンタム級王者ルイス・ネリ(24)=メキシコ=のビッグマウスが止まらない。
メキシコに本部を置くWBCは2019年7月10日、ネリをWBC同級王座の次期挑戦者に「指名」した。海外メディアが報じたもので、年内にも予定されるWBC同級王座統一戦、ノルディ・ウーバーリ(32)=フランス=VS井上拓真(23)=大橋=戦の勝者が、ネリと指名試合を行うことになりそうだ。
薬物疑惑、体重超過など数々の問題を起こしながらもいまだ無敗のネリに、王座返り咲きのチャンスが巡ってきた。ネリは7月20日に米ラスベガスで、元WBA同級スーパー王者フアン・カルロス・パヤノ(35)=ドミニカ共和国=とのノンタイトル戦を控えるが、これに先んじてWBCのマウリシオ・スライマン会長が、WBC同級王座統一戦の勝者は、ネリと指名試合をしなければならいとの意向を示したという。
WBCはネリのタイトル戦を「お膳立て」
すべては20日のパヤノ戦での勝利が大前提となるが、ネリがタイトル戦のリングに上がる日はそう遠くはなさそうだ。これまで数々の問題を起こしてきたネリに対するWBCの一連の対応には、関係者から不透明さと甘さが指摘されてきたが、今回はタイトル戦の舞台を「お膳立て」する模様だ。ネリ本人も悪びれる様子は一切見せず、体重超過の処分後は連勝を続け、ビッグマウスも相変わらずで吠えまくっている。
早ければ来春にもタイトル戦の機会が巡ってきそうな気配だが、事はそう簡単に運びそうもない。WBC王座統一戦で拓真が勝利した場合、大きな障害となるのが、ネリが日本ボクシングコミッション(JBC)から事実上の永久追放処分を受けていること。王者陣営が日本開催にこだわれば、指名試合とはいえ拓真VSネリ戦の実現は厳しいものになり、ネリ陣営がWBO王座に方向転換する可能性は大いにあるだろう。
リング外ではトラブルメーカーのネリだが、リング上では復帰後、順調にキャリアを積み重ねている。2018年3月のWBC同級タイトル戦で体重超過の「大失態」を犯しながらも、WBCが最終的に下した処分は6カ月間の資格停止処分。ボクシングでは6カ月間、試合間隔が空くことは珍しくはなく、ネリにとっては「休養」程度にすぎなかっただろう。復帰後の昨年12月には米国の大手プロモート社、プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)と契約を結び、ボクシングの本場米国に本格的に進出している。
「人々はオレとナオヤ・イノウエの試合を求めている...」
復帰4戦目してマニー・パッキャオ(40)=フィリピン=の前座を務めるチャンスをつかみ、パヤノ戦は米放送局「FOXスポーツ」のペイ・パー・ビュー(PPV)で全米生中継が予定されている。ビッグチャンスとなるパヤノ戦では、厳格な薬物検査を実施することで知られるボランティア・アンチ・ドーピング協会(VADA)による薬物検査が行われないという不可解なものとなるが、全米に名を売る絶好の機会であることには間違いない。
これまで自信過剰気味な強気発言を繰り返してきたネリは、タイトル戦が近付いている高揚感からか、そのビッグマウスは以前にも増して加速するばかり。パヤノ戦を前にして「人々はオレとナオヤ・イノウエの試合を求めている。みな、オレが最強だということを知っている」と豪語。まるでネリを中心にバンタム級が回っているかのような「勘違い」発言をし、井上との対戦に自信を見せた。
20日のパヤオ戦を落とせばすべてが水の泡に消える。日本のボクシングファンは「問題児」ネリに対して嫌悪感を露わにし、パヤノに肩入れするものが多くみられる。元スーパー王者を倒して、その先に進むことは出来るのか。ネリVSパヤノ戦に注目が集まる。