参院選は公示から1週間が経ち、中盤戦を迎えている。そんな中、ある候補が政見放送中、何度も言いよどむ場面が流れ、ネット上でちょっとした注目を集めた。
「放送事故では?」との指摘も出たが、もちろん生放送ではなく、録画もの(この候補の場合、スタジオ収録)だ。撮影中に演説が途中で失敗した場合、撮り直しはできないのか、できるとすれば何回まで可能なのか。規定について、J-CASTニュースが総務省とNHKに聞いた。
手話担当者はそのまま静止
「政見放送が放送事故?」
「お気の毒なまでにボロボロの放送事故レベル」
「こんなグダグダで中身なくて(略)みたいな内容でもそのまま放送するんだな」
2019年7月11日朝、関東圏でNHKの政見放送(東京選挙区の一部候補)が流れると、ツイッターにはこんな感想が相次いで寄せられた。80代男性の無所属新人候補の実名に触れた上で、驚きの声をあげたり、気の毒がったりしている。この候補は、
「主に、その、私が主張します...」
「......」
(約14秒後)
「それから道路関係の...(約3秒沈黙)」
と、つまりながら話を続けた。この間、画面向かって左側の手話担当の女性は、両手を体の前で重ねて待機していた。その後も、
「財源は...」
(約5秒後)
「財源は...えー...」
(約8秒後)
「車の販売は...」
(約7秒後)
「販売は...えーっと...(約8秒沈黙)」
と、時おり手元に置いた巻紙状の原稿に目を落として、関係個所を探すような素振りを見せていた。沈黙の間、手話担当者は、手話動作の途中で静止して待機した。候補者は最後半、自身の辛い生い立ちに触れつつ、話の途中で「以上。ありがとうございました」と締めくくった。
この政見放送内容をうけ、先に紹介したような反応がツイッターに寄せられた。中には、後段の「生い立ち」話を踏まえ、「頑張れ」と応援する人もいた。この候補は、過去の国政選挙にも立候補したことがある。
リハーサル1回と本番1回を行い「どちらか一つを選ぶことができる」
今回の政見放送のように、演説・原稿読み上げがうまくいかなかった場合、収録のやり直しはできないのだろうか。
総務省にJ-CASTニュースが11日に確認したところ、参院選(選挙区候補)でスタジオ収録の場合、収録(録音・録画)の回数は原則、「1回とする」(旧自治省1994年11月告示)としているが、実際の運用としては、「リハーサル1回と、さらに(本番)1回を行い、どちらか一つを選ぶことができる」(2019年5月「政見放送等の実施上の留意事項について」)。
「リハ1回、本番1回、どちらかを...」という趣旨の規定は、参院選では前回16年実施分から適用されている。それ以前は、撮影を1回行い、さらにもう1回の撮影に進む場合は、初回収録分は消去して新たな撮影(上書き撮影など)を行うことになっていた。また、公職選挙法の18年改正をうけ、今回の参院選から選挙区の候補者でも一定の条件を満たした場合は、スタジオ収録ではなく「持ち込み映像」を政見放送として使用できるようになっている。
今回の政見放送が注目を集めたNHKにも見解を聞いた。広報局の回答によると、
「総務省の『政見放送等実施上の留意事項』に基づいて、各候補には録画をともなうリハーサルを1回、さらに本番1回を行えることを説明し、どちらを使うかを選んでいただいています。
NHKは、公職選挙法と政見放送及び経歴放送の実施規程に基づいて、公平かつ適正に政見放送の収録を行っています」
とのことだった。
今回の候補の政見放送映像が「リハーサルの1回」なのか、「リハーサルの1回と本番1回のうち、選んだ方」かは不明だが、少なくとも「1回のやり直し」は可能な状況だったのは間違いない。