JR東イベントから、恒例の「車両展示」消えた ファンのマナー原因?気になる今後

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   車両基地公開イベントは、鉄道ファンが楽しみにしている「お祭り」でもある。しかし、そのお祭りに異変が起きている。その背景にあるのは何なのか。

   JR東日本は2019年7月4日に、8月24日開催予定の東京総合車両センター公開イベントの概要を発表した。その中で、毎年恒例かつ、定番だったはずの車両展示と試乗会・鉄道部品の販売が無くなったことが波紋を呼んでいる。

  • 定番の車両公開が、開催されなくなった(写真はイメージ)
    定番の車両公開が、開催されなくなった(写真はイメージ)
  • 定番の車両公開が、開催されなくなった(写真はイメージ)

昨年は「お召牽引機」にファン殺到

   東京総合車両センターは毎年夏休みに公開イベントを実施してきた。とりわけ車両展示は普段見られない貴重な鉄道車両が公開されるので人気の企画である。昨年の18年には、国鉄時代のお召列車牽引機「EF58 61号」が久々に公開されて目玉の展示車両となっていたが、19年はそれらの車両展示や試乗会は一切行われないことになった。

   他にも子ども限定の催しが中心となり、昨年まで持ち込み可能だった三脚や脚立類の持ち込みも禁止となった。これまでのイベントから、異例の方針転換となった。

   JR東日本東京支社に7月10日に取材を行ったところ、イベントの内容が昨年から変わった理由は、

「展示車両の都合がつかず、また昨年に想定以上のお客様が参加されたため、より来場の皆様に笑顔で楽しんでいただけるよう、小さなお子様を主に対象としたイベントとしました」

とのことである。

   前年の東京総合車両センター公開イベントでは、EF58 61号をはじめ貴重な車両が公開されたことから写真を撮ろうとする鉄道ファンがつめかけ、少なくない混乱があったことがネット上に投稿されている。

「撮り鉄」マナーは影響しているのか

   こうなると、よぎるのは昨今しばしばネット上にさらされる、「撮り鉄」などの一部の鉄道ファンのマナーの悪化である。JRより東京総合車両センターでの車両展示が行われないことがわかって以来、イベント会場での大人の鉄道ファンのマナーの悪化のせいでは、という指摘がなされていた。

「EF58 61を展示して鉄オタを興奮させてしまったのはやはり失敗だったみたいですね」
「係員に罵声浴びせてた鉄オタ反省しろよ」

と、昨年の事例から過激な大人の鉄道ファンの「自業自得」ではないかという見解もファンの間から現れていた。

   自身も長年の鉄道ファンである鉄道ライターの若林健矢さんに、近年のイベントでの鉄道ファンのマナーについて聞くと、

「私自身では生で見たことはないのですが、SNSなどを見る限りでも、一部のマナーの悪い言動が見受けられます。拡散されてしまえば、必要以上に悪いイメージを持たれてしまうのも確かです」

と話した。ごく一部ではあるが、イベント会場でもいい写真を撮りたいがために罵声を浴びせる、整列している撮影者の列を乱すというケースもあるという。

過激な大人より子どものファン優先?

   前述のとおり、19年の東京総合車両センターの公開イベントでは子ども向けの企画が目立つ。イベント名も「ちびっこ集まれ!楽しい電車のお祭りだ!夏休みフェア2019」となっていて明らかにファミリー層を意識したものだ。

   子どものファンは鉄道会社にとっても大切にしたい顧客ということで、JR東日本以外の鉄道会社でもこのような公開イベントをあらかじめ親子の参加者に限った事前抽選制とする、またイベント名に「ファミリー」とつけるなどして気軽にファミリー層に来場してもらおうとするケースが見られる。若林さんは

「鉄道会社は『イベントを通じて自社の取り組みを知ってほしい』と考えており、子どものファンはイベントを大人よりも純粋に楽しんでくれるのではないかとも思っております。
大人ファンの参加ももちろんのことですが、家族連れの方々が鉄道イベントを楽しんでくれれば会社としては集客数や売り上げアップにつながるのでしょう」

と推測する。長期的に自社のファンになってくれる子どものファンを増やしたい、という鉄道会社の意図が、近年の各社のイベントの傾向から見て取れる。

   無論成人したファンの大多数は良識を守って行動しているのだが、公開イベントや臨時列車の運転のような、年に数回しかないチャンスがあるたびに一部のファンが暴走し、一般客に迷惑をかけることが散見されるのも事実である。若林さんも

「鉄道ファンの1人としては悲しいのですが、一部のファンのマナーの悪い言動を見てしまうと、仕方ないのかなと思ってしまいます。トラブルが発生してしまい、次年度以降その企画が行われなくなってしまうのは、非常に悲しいことですが受け入れざるを得ません」

と、周囲を顧みないファンの行為に警鐘を鳴らす。

(J-CASTニュース編集部 大宮高史)

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