東京パラリンピックに向け、横浜市内のホテルがイギリスのチーム側にバリアフリー化の費用を示し、一時トラブルになっていたことが分かった。
日本の障害者団体がこの問題に懸念を示したが、内閣官房の担当者は、J-CASTニュースの取材に「費用面では解決したと聞いている」としている。
英チームに「費用負担」要求と報道、ただし実際は?
横浜市内では、パラリンピック直前の2020年8月に英チームがトレーニングキャンプをする予定になっている。前出のホテルは、キャンプに参加する選手らが宿泊することになった。
市のオリンピック・パラリンピック推進部が取材に答えたところによると、英パラリンピック委員会(BPA)は、バリアフリールーム以外で必要な数の一般客室について改修してほしい項目をいくつかホテルに伝えた。部屋のドアなどを車イスが通れるようにとの依頼で、浴室にあるシャワーのガラスの扉は外すように求めた。
これに対し、ホテル側は、改修にいくらかかるか費用を示したほか、部屋が水浸しになるとして、客室として機能させるためにガラスの扉を元に戻さないといけないと説明した。このようなことをせず、浴室を完全にバリアフリー化すると、多額の工事費用がかかるという。
市によれば、ホテル側は、BPAに費用の支払い要求をしたわけではないというが、英大手メディア「ガーディアン」は2019年4月、ホテルがバリアフリールームへの改修や宿泊後に元に戻すことへの費用を英チームに支払うよう求めたと報じた。
6月に入ると、日本の一部メディアも、英メディアの報道を元に、ホテルと英チームの間で一時トラブルになっていたことを伝えた。
そして、日本の障害者団体「DPI日本会議」は7月3日、ホテルが費用を要求したとする報道について懸念を示すコメントをサイト上で出した。
「どのような改修にするのか話し合いをしているようです」
そこでは、「今回のホテルの対応は許容できない」とし、ホテル側に抗議して話し合いたいとしている。
DPI日本会議の担当者は7月9日、次のように取材に話した。
「そもそもパラリンピックに向けてバリアフリールームの数が足りないのに、客室の改修費用を英チーム側に求めたとしたらおかしい。改修して元に戻すことでいいのかも疑問を持っています」
日本会議のバリアフリー顧問は、バリアフリールームの数は、選手や役員のためが主で、一般客の受け入れには足りないのではないかとも指摘した。
横浜市のオリンピック・パラリンピック推進部によると、改修費用をどこが負担するかは、ホテルとBPAとの話し合いになるという。市では、BPAからバリアフリールームの数が少ないなどの話があったこともきっかけに、4月から宿泊施設のバリアフリー化のための補助金を新設した。対象になれば制度を利用することもできるとしたが、BPAが費用の一部を負担するかどうかは分からないという。
なお、市内のバリアフリールームについては、「目標値は作っておらず、できるだけ多くしたい」としている。
内閣官房の担当者は、「ホテルは、元に戻す費用は請求していないと聞いています。改修費用については分かりませんが、お金の面では解決したと考えています。現在は、どのような改修にするのか話し合いをしているようです」と話した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)