「詐欺罪などの可能性低いが、失うことの方が多い」
「ウソを付くことは、それだけでは犯罪にならないです。音楽教室も、『JASRACは来るな』とは明示していません。ですから、詐欺罪などに問われる可能性は、ゼロではないものの低いと思います」
裁判で証拠採用されるかについては、「民事では、盗んできたものなどでない限り、どんな証拠を出しても自由とされていますので、証拠になる可能性は高いでしょう」と深澤弁護士はみる。ただ、「2年間の調査で信用性はありますが、『演奏会みたいだ』というのは決定的なものではなく、証拠としての価値は低いと言えます」と話した。
さらに、深澤弁護士は、こう指摘する。
「教えた先生をだましたことで、先生の気持ちが踏みにじられています。音楽の啓蒙をしている公益の仕事なのに、著作権料徴収に向けての説得力がなくなるでしょう。アーティストの権利も守られないことになり、失うことの方が多いと思います」
JASRACが裁判で勝つか負けるかについては、「コメントするのは難しい」とした。その一方で、「勝ったとしても、最新の曲が習えないなどして教室の生徒が少なくなり、音楽文化も縮小すると思います。JASRACの立場はあると思いますが、著作権利用料は低くするなど落とし所を考えた方がよいでしょうね」と話した。
JASRACの広報部は7月8日、手法への疑問などについて、「証人尋問の前ですので、お答えするのは難しいです」と取材に答えた。
ただ、一般論だとしたうえで、こう説明した。
「実態調査は、確かにあります。カラオケ店などで権利侵害があったときに、自らそう申告することはないので、証拠を集めないといけません。職員だと名乗れば、調査が成立しなくなってしまいます。過去には、調査が違法ではないかと訴えられましたが、高裁で確定した判例では正当と判断されています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)