資生堂の株価が下落傾向となっている。中国政府が電子商取引(EC)事業者への取り締まりを徹底すると伝わった2019年6月21日の東京株式市場で7営業日ぶりに反落し、一時5.0%(433円)安の8296円をつけた。
その後も一進一退を繰り返しながら徐々に水準を切り下げ、7月3日には約1カ月ぶりに一時、8000円の大台を割り込んでおり、反転のきっかけをつかみづらい状況が続いている。
「代購」への圧力強める中国政府
ブルームバーグなどの報道によると、中国当局はインターネット上での不公正な競争や偽造品販売を取り締まる特別作戦を開始すると発表。具体的には、観光と食品発注サービス、国境を越えた電子商取引のためのスマホアプリを使用した犯罪や違反を取り締まるほか、海外の買い物代行サービスや国境を越えた電子商取引事業運営者による輸出入への監視を強化する。目的・理由として中国当局は「公平に競争できる市場秩序を作る」「ネット取引の健全な発展を促進する」「消費者と経営者の合法的な権利を保護する」などを挙げている。
この発表が伝わってから最初の取引となる6月21日の市場では、資生堂やポーラ・オルビスホールディングス(HD)、コーセーといった化粧品株、ユニ・チャームやピジョンなどの日用品株が軒並み値を下げた。いずれも「代理購入(代購)」と呼ばれる、日本で化粧品や紙おむつを大量に買って中国で転売する個人ブローカー(バイヤー)を一定の購買層として「あて」にしている企業で、その影響が懸念されて株が売られたというわけだ。
代購は訪日客や日本在住者が中国に商品を持ち込んでSNSなどで転売するもので、関税を払っていないケースが多いため、中国の消費者にとっては割安で買えるメリットがある。一方で関税収入が得られない中国政府は見過ごせないと判断。今年1月に施行した電子商取引(EC)法で個人で営むネット通販業者にも登録や納税を義務づけることで代購の取り締まりを強めていた。
決算自体は「悪くない」にもかかわらず...
これ以降、代購ルートによる中国への「輸出」は減ってはいたが、少なくとも壊滅にはいたっておらず、日本メーカーには楽観視する見方も出ていただけに、法規制が半年経ったところで取り締まり強化が打ち出されたことが株式市場にネガティブな驚きを与えることになったようだ。
通期が12月期の資生堂は、5月14日に2019年1~3月期連結決算を発表している。その内容を確認し、年初からの影響を見てみよう。売上高は前年同期比3.7%増の2736億円で伸び率は前年同期(13.5%)から鈍化。営業利益は前年同期比17.4%減の389億円、経常利益は16.3%減の395億円とそれぞれ減益に転じ、純利益は16.1%増の335億円だった。営業・経常減益の主因は世界各地でマーケティングコストが上振れしたことだった。
決算についてアナリストの評価は「1月に中国でEC法が施行されてバイヤーの活動が停滞した影響や、生産能力不足による売上機会損失、輸送コスト上昇などがあったが、中国本土やインバウンドなどの売上は引き続き成長が続いており、業績拡大のトレンドが継続していると言えるだろう」(野村証券)などと全体としては悪くないものが多い。
ただ、決算資料によると前年同期(2018年1~3月)はインバウンド売り上げが前年同期比40%超の増加を記録したが、2019年1~3月は前年同期比の伸びが6%に鈍化。このうち一般のインバウンドが10%台半ばの伸びだったのに対し、バイヤーによるものは10%台半ばの減少で、EC法が与えたマイナスの影響は無視できない水準にある。今後、取り締まりが強化されることは十分に株価には重しとなりそうだ。