参院選「特定枠」の使い道 個人の選挙運動ほぼできないけど...利用する党は?

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   今夏の参院選から比例代表で、政党や政治団体が事前に定めた優先順位によって、当選できる候補者が決まる「特定枠」の制度が導入された。

   制度を主要政党で利用しているのは、自民党。また、政治団体の「れいわ新選組」「労働の解放をめざす労働者党」も利用を打ち出した。そもそもどんな制度なのだろうか。

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立候補できない現職を救済する制度→野党からは批判の声

   特定枠は、「全国的な支持基盤を有するとはいえないが国政上有為な人材あるいは民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなる」(総務省資料より)ことをうたい、今回の参院選から導入された新制度。自民党が主導して成立させた。

   参議院の定数6増や特定枠導入などを盛り込んだ改正公職選挙法案は昨18年6月に提出された。同年7月に同法は成立し、10月に施行された。しかしこの「特定枠」については、「選挙区が統合された合区で立候補できない現職を救済する制度」だとして、野党からは「党利党略」などと批判の声が上がっていた。

   特定枠に記載されている候補者の票は、政党や政治団体の票とみなされる。総務省選挙課の担当者は2019年7月5日、J-CASTニュースの取材に対し、「特定枠に登録されている候補者の名前を書いたとしても、政党名としてとらえて政党に1票が入る」と説明。

   つまり、候補者の個人名を書いても、政党や政治団体の票としてカウントされる。担当者は「あらかじめ優先的に順位が決められているので政党に一票が入ると、自動的にその人に1票が入る」と理由を話した。

個人としての選挙運動は制限

   一方、特定枠に記される候補者は、個人としての選挙運動が制限される。総務省選挙課の担当者は取材に

「インターネットを使ったり、メールを送ったりすることは選挙運動としてできるが禁止されていることが多く、選挙事務所を持つこと・使用すること、選挙運動自動車・拡声器を使用すること、通常はがき、ビラ、ポスター、パンフレットを頒布すること、街頭演説、連呼行為、個人演説会もできない」

と解説。原則として、個人の選挙運動が認められない決まりとなっている。

   これまで参院選の比例代表では、当選順位を定めない非拘束名簿式が用いられてきた。各政党の議席数は政党名と個人名による得票数の合計に応じて決まり、当選人は個人名の得票数が多い順に決まっていく。

   担当者は取材に、「通常の比例だと個人の得票数によって当選人は決まるが、今回は政党としての優先度が決まっている。その人に得票が全然集まらないことはない。(個人の)優先度が高くなるのが目に見えるのもあり、原則として個人の選挙運動は認めない」と説明した。

政治評論家「自民党が得する制度」

   特定枠を利用するのは、自民党(2人)、れいわ新選組(2人)、労働の解放をめざす労働者党(1人)。主要政党の中では自民党が利用し、候補者を擁立する。一方、他の主要政党の利用はなかった。

   政治評論家の有馬晴海氏は「比例で1位2位3位って政党が決めたら、選挙で選ばれているわけじゃなく政党が選んでいることになる」と強調。制度の問題を、「最初から自民党が合区のところで当選するということを前提に救済ができるやり方で自民党が得する制度。一票の格差と平等に当選可能にしないと。例外を設けることはよくない」と指摘する。

   一方で特定枠をめぐっては、「れいわ新選組」の山本太郎代表(参議院議員)が利用し、重度障害のある女性と難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の男性を擁立する方針を明かし、注目を集めた。有馬さんは「与党が自分の有利になることで設けた制度だが、ほかの野党は利用する手立てをあまり考えなかった。(山本太郎氏らは)当選可能プランの考えを駆使して、うまい戦術をしている」とみていた。

(J-CASTニュース編集部 田中美知生)

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