演劇ファン「迷惑行為では?」 鴻上尚史の「前のめり観劇」持論が物議

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   劇作家の鴻上尚史さんが、観劇のマナーに対してつぶやいた投稿をきっかけに、演劇ファンから「前のめりの観劇はやめて」という声が発せられている。

   日本の劇場では、前のめりの姿勢での観劇はマナー違反というのが一般的な認識だ。このため、「前のめりの観劇はご遠慮ください」というお知らせやアナウンスがなされている。

  • 観劇マナーをめぐって意見割れる(写真はイメージ)
    観劇マナーをめぐって意見割れる(写真はイメージ)
  • 観劇マナーをめぐって意見割れる(写真はイメージ)

「お客さんを夢中にさせて前のめりにさせることが目標」

   鴻上さんは2019年7月2日に、このようなアナウンスに違和感を覚えるとして、

「ひとつは、急勾配の二階や三階では前のめりは見えなくなるが、ほとんどの劇場では一階は前のお客さんが前のめりになると視界が広がって見やすくなる」 「そして、違和感の二つ目は、僕達演劇人は、お客さんを夢中にさせて前のめりにさせることが目標だと思っているからだ」

とツイートした。この投稿は物議を醸し、演劇ファンの間ではたくさんの意見が飛び交ったが、大半が鴻上さんに批判的なものだった。

「いやいやいや、前のめり観劇をされて視野が広がってイェーイ☆ってなったことなんて一度もありませんけど?!」
「鴻上さん、身長140?150センチ台の女性のこととか考えてないよなぁ。あとたぶん観劇の時は大体関係者席(いい席)なんでしょ」

などである。1階席でも前のめりでの観劇は迷惑行為だという意見が圧倒的だった。

作家と観客のすれ違い

   鴻上さんはこのような反応を受けて一部のツイートを削除し、

「作り手にとっては別な意味で大問題なのです。前のめりのアナウンスを聞くたびに、熱中するなと言われているようで、心、潰れるのです。制作意欲に冷水をぶっかけられるような。困ったジレンマです」
「僕の考える『前のめり』は『前かがみ』のことで、迷惑を受けているという方のは『椅子に浅くかけた前伸び上がり』、ということみたいですね」

などと投稿した。

   鴻上さんは身体を前に傾けるだけでなく、舞台に集中するポジティブな意味でも「前のめり」という言葉を使ったのだが、演劇ファンにとって「前のめりの観劇」は、後方席の視界を妨げる行為と認識されている。鴻上さんとファンのすれ違いが、批判に発展したようである。

   試しに広辞苑第7版で調べてみると、「前のめり」は「前方に倒れるように傾くこと」、「前かがみ」は「体を前へ曲げてかがむこと」となっている。ニュアンスの違いはあるが、どちらも身体を背もたれから離す行為だ。いずれにせよ深く腰掛けて観劇することがマナーである演劇界では顰蹙を買う行為で、1階席でも2階席以上でも、前傾姿勢での観劇をされて迷惑だったという体験談を、鴻上さんのツイートをきっかけに、多くの演劇ファンがSNSに投稿していた。

   鴻上さんも不作法な観劇を容認する意図ではなく、「思わず身を乗り出してしまうくらい魅力的な舞台を作る」というポジティブな意図を込めてのツイートだったが、

「演劇関係者がこういう主張をしてしまうのはまずい」

と、落胆するファンが少なからずいたようだ。

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