参院選の公示を前日に控えた2019年7月3日、与野党7政党による党首討論会が東京・内幸町の日本記者クラブで開かれた。
野党からは消費税率の引き上げや年金などをめぐり安倍晋三首相(自民党総裁)を追及する声が相次いだ。32ある1人区には、野党が候補者を一本化して統一候補を立てて臨む。与党側は、「(参院選)終わったらまた、バラバラになりますよね」(安倍氏)などと、完全には政策が一致しない中で統一候補を立てたという点に集中して野党批判を展開した。
「立憲の候補予定者の中には『消費税はゼロでもいい』、こう叫んでいる人もいる」
討論会は2部構成で、前半部分では登壇者が別の登壇者を指名して質問できる。口火を切ったのが公明党の山口那津男代表だ。山口氏は財源の問題について、立憲民主党の枝野幸男代表に
「共産党は増税中止と言っている。立憲民主党は凍結という立場のようだ。立憲の候補予定者の中には『消費税はゼロでもいい』、こう叫んでいる人もいる。しかし枝野さんは、かつての民主党政権の時に3党合意を推進した立場だ。こうした野党が統一候補を立てる中で、責任ある財源を示すべきだ」
と、10月に予定されている消費税率の引き上げについて、野党間でも立場が割れていることについて疑問をぶつけた。これに対して、枝野氏は
「1人区で一本化した野党各党は、消費税を当面上げられる状況にはない、ということでは完全に一致している」
などと反論。立憲としては、法人所得税の引き上げや金融所得課税の強化を主張していることを紹介した。
自衛隊めぐる合憲・違憲論
安倍氏は、
「立憲主義という立場に立っているのであれば、候補者を1人にしぼるにあたって、憲法という、しかも自衛隊が合憲か違憲かという最も大切な点は統一すべきではないのか」
などと自衛隊をめぐる違憲論をやり玉にあげて枝野氏に質問した。立憲民主党は、自衛隊は合憲だという立場だが、共産党は違憲だと主張している。安倍氏は、共産党の候補が野党統一候補になる選挙区も多数あることを指摘し、こういった地域について
「立憲民主党を支持する方は、共産党の候補者に入れるように働きかけているのだと思う。もし枝野さんが福井県民だったら、共産党の候補者に1票を入れる、ってことになるんですか?」
などと指摘した。
「安保法制廃止で5党1会派は一致」
野党共闘を後押しする民間団体「市民連合」は5月29日、4野党1会派(立憲、国民、共産、社民、社会保障を立て直す国民会議)に政策要望書を手渡しており、これが事実上の野党間の政策協定だと位置付けられている。ここでは、憲法9条改正阻止や、安保法制の廃止をうたっている。この点を念頭に、枝野氏は、
「有権者の皆様に『今の政治の継続でいいのか、それとも軌道修正が必要ではないのか』という明確な選択肢を示したと思う」
「憲法違反である安保法制は廃止とするという点で、5党1会派は一致している。その考え方に基づく候補者に当選してもらいたい」
と主張したが、立憲支持者が共産党候補に投票すべきか、という安倍氏の問いに直接は答えなかった。
「政府を倒すためだけに統一候補を選んでいる」
安倍氏は、枝野氏が質問に答えなかったことに加え、(1)枝野氏が6月30日のネット党首討論で、統一候補が当選した場合、自衛隊が違憲だという主張は「(任期中の)6年間は国会で言わないことで一致したと理解している」と述べたこと(2)にもかかわらず、沖縄選挙区(改選数1)の野党統一候補予定者が自衛隊が違憲だと主張していること、などを挙げ、野党共闘のあり方を非難した。
「枝野さんの言っていることと違うんじゃないですか?こんなに根本的なところで違う。政府を倒すためだけに統一候補を選んでいる。(参院選が)終わったらまた、バラバラになりますよね。また決められない政治の再現としか、私は言えないのではないかと思います」
なお、仮に自公政権が倒れ、共産党が連立政権の一角を占めるようなことがあれば「当面の野党連合政権としては自衛隊を容認するし、政府の憲法判断としては合憲という立場をとる」(18年10月・志位和夫委員長)と説明している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)