米国のトランプ大統領は2019年6月30日、韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店を訪れ、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長との3回目の会談に臨んだ。
国際社会にとって最大の関心事が、朝鮮半島の非核化をめぐる問題だ。19年2月にベトナム・ハノイで行われた2回目の首脳会談で決裂した非核化協議は、実務者チームを設けて再開することで合意した。北朝鮮が連日のように対米非難記事を配信する中での急展開だ。トランプ氏は会談後、「交渉が行われているどこかの時点で制裁解除はあり得る」と話しており、制裁解除と非核化をめぐる綱引きが本格化しそうだ。
ツイートから1日半で会談が実現
会談のきっかけになったのは6月29日朝(日本時間)のトランプ氏のツイート。
「もし、金委員長がこれ(トランプ氏のツイート)を見ているなら、非武装地帯で会って握手と挨拶をしよう」
という内容。トランプ氏が現職大統領としては初めて軍事境界線を越えたのは、それからわずか1日半ほど後だ。
7月1日付けの労働新聞は、今回の米朝会談を35枚の写真つきで大々的に報じ、非核化をめぐるやり取りについて、両国首脳が
「今後も連携を密にして朝鮮半島の非核化と朝米関係において新しい突破口を開くための生産的な対話を再開し、積極的に推し進めていくことで合意した」
などと前向きに報じた。ただ、双方が考える非核化のプロセスをめぐる溝は埋まっておらず、紆余曲折が予想される。
米側に「まともな対案」要求
2月の会談では、金氏が寧辺(ニョンビョン)の主要核施設廃棄と引き換えに制裁緩和を要求したのに対して、トランプ氏が拒否したことが決裂の原因になったとみられている。ここ数日の北朝鮮側の報道でも、制裁に批判的な談話が目立つ。6月26日付けの外務省スポークスマンの談話では、ポンペオ国務長官が制裁の重要性を強調したことを
「シンガポール朝米首脳会談で採択された朝米共同声明に対する正面切っての挑戦であり、対朝鮮敵対行為の極みである」
などと非難。6月27日には、外務省の米国担当局長が、
「米国と対話を行おうとしても、協商の姿勢が正しくなくてはならず、言葉が通じる人と協商すべきであり、まともな対案を持って出てこそ協商も開かれる」
などとして、「まともな対案」が対話の前提だと主張している。「対案」は制裁の解除や段階的な非核化を指しているとみられ、実務者協議でも焦点になりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)