大阪中の話題をさらったG20サミット(2019年6月28日・29日)を終えると、2025年の大阪万博が待ち構える。
大阪万博の事前準備で注目されるのがインフラ整備だ。関西の交通インフラ、特に鉄道網は万博を契機に発展してきた。今回は2025年大阪万博に向けた関西の鉄道網の発展予想図を整理したい。
鉄道路線ない夢洲...浮上する延伸計画は?
2025年大阪万博は南港にある人工島・夢洲で行われる。夢洲は万博だけでなくカジノなどの統合型リゾート施設建設の計画もあり、これから大いに注目される「島」になるだろう。 2019年6月現在、夢洲へは一般道路のみが乗り入れており、鉄道路線はない。そこで、大阪市内から夢洲への鉄道の延伸計画が持ち上がっている。
1つ目はOsaka Metro(大阪メトロ)中央線の延伸だ。既に大阪メトロ中央線は南港のコスモスクエア駅まで達している。計画ではコスモスクエア駅から約3キロ先の夢洲まで延伸される。
2つ目はJRゆめ咲線(桜島線)の延伸だ。計画では終点の桜島駅からの延伸を目指す。ただし、大阪メトロ中央線とは異なり、桜島駅と夢洲の間に中間駅が設けられる予定だ。
3つ目は京阪中之島線中之島駅からの延伸。3つの延伸計画の中では最も延伸距離が長く、京都にも直結することが特長だ。
万博での飛躍を狙う近鉄
先ほどの計画の中で、建設が確実視されているのが大阪メトロ中央線の延伸計画だ。夢洲周辺の地図を見ると、単なる延伸計画に見えるかもしれない。しかし近畿日本鉄道(近鉄)の動向を考慮すると、大きなプロジェクトになる可能性を秘めている。
大阪メトロ中央線は近鉄けいはんな線と相互直通運転を実施。近鉄けいはんな線は生駒駅で主要路線である近鉄奈良線に接続している。しかし、奈良線とけいはんな線・大阪メトロ中央線は集電方式(電気を外部から電車に取り込む仕組み)が異なるため、現段階では相互直通運転ができない。
近鉄は5月14日に新「近鉄グループ経営計画」を発表。その中で近鉄沿線から夢洲への直通列車の計画を打ち出した。つまり、集電方式の差異をクリアできる新造車を製造し、奈良線とけいはんな線・大阪メトロ中央線の間で相互直通運転が実現する予定だ。このプロジェクトが実現されると奈良~夢洲間の直通特急も夢ではない。
振り返ると、1970年開催の大阪万博の際にも、近鉄は大阪ミナミの中心地である難波への乗り入れを果たした。2025年開催の大阪万博で近鉄は再び大きく飛躍するのだろうか。一鉄道ファンとして大いに注目したい。
(フリーライター 新田浩之)