政治団体「れいわ新選組」代表の山本太郎参院議員(44)は2019年6月27、28日、都内で記者会見を開き、今夏の参院選で、2人の候補者を擁立すると発表した。
候補者は山本代表と、蓮池透氏に続き、それぞれ3人目と4人目。2人が出馬を決めた理由とは――。
安冨歩氏「政治の原則を変えないといけない」
27日の会見では、東京大学東洋文化研究所教授の安冨歩氏(56)が出馬を表明した。「女性装の教授」として知られている。安冨氏は50年にわたり、自分を「男性」と思ってきたが、ダイエットをきっかけに「女性もの」の服を着たことで、「無理をして男の服を着ていると気づいた」と振り返る。「これが私にとっては自然なので、こういう恰好をしている」。
安冨氏は、現代社会を「豪華な地獄」とたとえ、「見た目はすばらしいが、息が詰まって苦しくてたまらない」。「豪華な地獄」とは「国民国家という名前のシステム」だといい、「機能しなくなり始めたのは、第一次世界大戦の時。そこから百年もたっているので完全に機能しなくなっている」と指摘する。一方で「政策をどうこうの段階ではもうないと考えていて、政治の原則を変えないといけない」とも主張した。
「『子どもを守ること』ということを政治の判断のすべての基礎に置く。『生きづらさ』から私たちの社会を解放し、現代の危機から私たちを救い出す唯一の道ではないか」(安冨氏)
また安冨氏は、「投票しても何も変わらないように政治が作られている」とも指摘する。
「政治というシステム全体が機能しなくなりつつあるという恐怖感から、太郎さんは新しい希望を、何か開こうとしているんじゃないかという期待が集まっているんじゃないか」「今までの政治の外に新しい政治をつくることで、議会制民主主義を再生する力を(人々は山本氏に)期待しておられるんじゃないか。私自身もそういう力を感じたので、子どもを守ろうっていう政治の原則を訴えるのが、ここなら可能ではないかと思って、参加しました」(安冨氏)
木村英子氏「障害当事者として政治に参加し、少しでも変えていくことができたら」
28日には、重度障害者の木村英子氏(54)の擁立も発表された。重度の障害があり、24時間介助の必要な人物が国政選挙に立候補するのは、「異例」とみられる。脳性麻痺がある木村氏は、地域での生活を望む当事者の自立支援に携わってきた。
体はどの部分も動かず、歩いたり足を伸ばしたりすることができない。「どこも動けません。しゃべれるだけです」。生後8カ月の時、歩行器ごと玄関に落ちて、首の骨を損傷。幼いころから施設と養護学校で暮らし、19歳で地域に出るまで社会を知らずに育った。「同い年の健常者の友だちができたのは地域に出てきてからです。一生施設で生かされ、死ぬまで出ることはできないと、ずっと思っていました」。
木村氏は障害者運動の中で山本氏と出会い、「障害を持った当事者の現状を、直接国会に訴えていってほしい、一緒に戦っていきましょう」と出馬を呼びかけられたという。
「私のような重度障害者が国会に声を届けるチャンスを、太郎さんから頂いて、今回立候補させてもらうことを決意しました。厳しい現状を強いられている仲間たちの苦悩と叫びを、私が障害当事者として政治に参加し、少しでも変えていくことができたら」(木村氏)
キーワードは「生きづらさ」と「生産性」
山本代表は両日の会見で、今の社会状況を端的なキーワードを使って表現した。
安冨氏の会見では、「今の日本の中で一番の問題は生きづらさ」と指摘し、「『男らしさ』とか、『女らしさ』とか、『子どもらしさ』とか、『母親らしさ』とか、っていう地獄のようなカテゴライズといいますか、こうあるべきだという枠にはめられながら生かされるような現代の、まさに地獄」と表現していた。
木村氏の会見であげたキーワードは、「生産性」。「生きづらさにつながっていく」としつつ、「生産性というもので人間の価値が測られるような社会に、もうすでになっていると思います」と危惧。「人間は存在するだけで価値があるものという考え方に基づいて政治が行われないならば、その世は地獄であろうと。今がその状況だと考えています」と持論を展開し、
「生産性ではなく、いかに存在しているだけで人間は価値があるか、という社会を実現するために政治がある。そういう考え方のもとに、れいわ新選組はこれからやっていきたい」
とビジョンを語った。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)