安倍晋三首相が各国の首脳らを握手で出迎えた。大阪市で開幕した20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)。安倍首相が首脳らと一人一人順番に握手する様子は、NHK(総合)が生中継した。
韓国の文在寅大統領とも握手を交わしたが、その報道ぶり(ウェブ版見出し)はメディアによって、「硬い表情で(略)お互い目を合わさず」「笑顔で握手」「ぎこちなさも」...と異なる印象を与える程の差があるものとなった。
G20サミット会場で首脳らを出迎え
2019年6月28日昼、安倍首相はG20サミット会場で各国首脳を出迎えた。画面左手側から順番に登場する首脳らと一人一人握手を交わした。
トルコのエルドアン大統領のあとが文大統領だった。昨今の日韓関係は冷え込んでおり、元徴用工訴訟問題をめぐって対立を深めている。G20期間中にも日韓首脳会談が設定できない程の事態となっている。こうした背景もあってか、安倍首相と文大統領の握手について、写真や動画を添えてウェブ版ニュースで速報するメディアもあった。ただ、その報道ぶりは、記事によって異なる印象を与えるほど異なるものだった。
各社の見出し、本文、写真(動画)を確認すると、次のような紹介だった。
共同通信は「首相、硬い表情で文大統領と握手 出迎え時、お互い目を合わさず」の見出しで、「握手の際、わずかに会釈を交わしたものの、表情は硬いままだった。お互いにしっかりと目を合わす場面もなかった」と指摘した。さらに、文氏の前後の首脳、トルコのエルドアン大統領とフランスのマクロン大統領の出迎えの際には「満面の笑みだったが」として、「文氏とは口を結んで笑みを浮かべるにとどめた」と分析的に描写した。写真は、安倍首相と文大統領が握手のまま正面を向いている姿のものを使っている。
対照的な印象を与えるのは毎日新聞。「安倍首相、出迎えで文在寅大統領とも笑顔で握手」(見出し)、「元徴用工などを巡って関係が冷え込む韓国の文在寅大統領も笑顔で出迎え、握手を交わした」(本文)として、写真は握手する直前、手と手が触れ合う少し前の瞬間で、安倍首相の表情は笑顔のようにも見え、両者の視線も合っているとの印象を与える場面となっている。動画も添えている。
上記2社の中間、といった感じの記事を出したのは読売新聞。「安倍首相、韓国大統領と握手8秒間...ぎこちなさも」(見出し)、「(略)韓国の文在寅大統領と8秒間、握手を交わした」「首相と文氏はお互いの顔を見ながら、穏やかな表情で握手したが、ぎこちなさが残った」(本文)という内容だった。写真は、両者が握手をしており、安倍首相は、口を結んで口角をやや上げており、普通の笑顔のようにも、「ぎこちない」笑顔のようにも見える。アイコンタクトは、しているように写っている。
公式の日韓首脳会談の予定はなし
他のメディアも見てみると、フジテレビ(FNN PRIME)は、動画を添えて、速報として「日韓首脳 笑顔で握手 公式会談予定はなし」の見出しで報じ、本文では「2人とも笑顔が見えて、にこやかに見えるが、今回は日韓首脳による公式会談の予定はないという」と指摘していた。
産経新聞(産経ニュース)の見出しは「安倍首相、各国首脳を出迎え 韓国の文大統領とも握手」と事実ベースの淡々としたもので、本文では「トランプ米大統領や中国の習近平国家主席ら首脳一人一人と、笑顔で握手を交わして短時間、あいさつ。午前11時半頃ごろ(原文ママ)、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とも握手を交わした」となっていた。
NHK放送の録画をJ-CASTニュース編集部が確認した範囲では、確かに共同通信が指摘したように、文大統領の前後のエルドアン、マクロン両大統領の時と比べると、「笑み」の程度に差があるようにも見えた。マクロン氏とは握手の前にハグもしていた。一方、握手の直前と握手を終える際にはそれぞれ、文大統領と目を合わせているように見えた。ただ、握手前のアイコンタクトの時間は、少なくとも前後の両首脳の際と比べると、短めの印象も受けた。いずれにせよ、「笑み」の程度の認定にせよ、「目を合わ」したのが「しっかり」か否かの判定にせよ、その差は微妙なようだ。
G20サミットは29日に閉幕する。期間中の日韓首脳会談は予定されていないが、「立ち話程度」の場面はあるかもしれない、との指摘も出ている。