井上尚弥に上から目線で「挑戦状」のWBO王者テテ それでも井上の勝利が動かない理由

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   ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(26)=大橋=が、米国で最も権威のあるボクシング誌「ザ・リング」の最新号で表紙を飾る。「ザ・リング」公式ツイッターが発表(2019年6月25日)したもので、今年2月号で日本人として初めて同誌の表紙を飾って以来、2度目の「栄誉」となる。階級を超えて世界的評価を受ける井上との対戦を望むボクサーは多く、WBO同級王者ゾラニ・テテ(31)=南アフリカ=、元WBC同級王者ルイス・ネリ(24)=メキシコ=らが対戦を熱望している。

   井上はワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)決勝戦でWBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(36)=フィリピン=との対戦を控えており、まずはこの試合に集中したいところだ。その一方で、ドネアとのWBSS準決勝戦を肩の負傷により欠場したテテは5月に「(WBSSバンタム級王者は)すべてのベルトを手にするために自分とWBC王者と対決しなければいけない」と上から目線で対戦を要求しており、将来的な王座統一戦に期待がかかる。

   テテの強気コメントの根拠は不明だが、米メディアの報道によると、すでに肩の負傷は回復し練習を再開しており、今秋にも復帰する見込みだという。テテといえば世界戦最速KO男として知られる。2017年11月に行われたWBO世界バンタム級タイトルマッチで史上最速の11秒KO勝利を収めている。日本のリングにも上がったことがあるテテだが、その実力は果たして井上を上回るものなのだろうか。

  • 井上尚弥(2016年撮影)
    井上尚弥(2016年撮影)
  • 井上尚弥(2016年撮影)

ツボにはまった時の一発は要警戒

   テテはIBF世界スーパーフライ級王座とWBO世界バンタム級王座を獲得し、世界王座を2階級で制覇している。身長174.5センチ、183センチのリーチはバンタム級の選手として恵まれた体格である。28勝のうち21のKOを誇るハードパンチャーで、サウスポースタイルから放たれる左ストレート、フックを主武器としている。その強打の一方で、試合でダウンを喫した経験を持ち、必ずしも打たれ強くはない。

   井上とテテの王座統一戦は、WBSS決勝戦で井上がドネアに勝利することが大前提となるが、対戦するとなると結果はどうなるだろうか。総合力上回る井上の勝利は動かないだろう。井上はサウスポーを苦にしておらず、これまでもオマール・ナルバエス(アルゼンチン)やフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)ら世界の強豪サウスポーをキャンバスに沈めている。

   テテのボクシングスタイルの特徴は、体格を生かした懐の深さだ。足の幅を肩幅よりも広めにとり、183センチのリーチのアドバンテージを利用する形で遠目から左を放つ。右のジャブはけん制気味に使うものと、右足を踏み込みながら右ストレート気味に放つものと使い分け、攻勢に出る時には右足を踏み込んだジャブから左、そしてアッパーのコンビネーションを繰り出す。攻撃力だけをみれば、恵まれた体格を十分に生かしたスタイルで、しかもサウスポーということもありツボにはまった時の一発は要警戒だろう。

総合力で判断すると井上の勝利は動かず

   その一方でディフェンス面に目を向けると、井上の防御技術には遠く及ばないだろう。テテはパンチをガードで防ぐのではなく、パンチを見切ってよけるタイプ。いわゆる目がいいボクサーで、その上、身体能力が高く上体だけでパンチをよける。ただ、この目の良さと身体能力が世界トップレベルの戦いになると、諸刃の剣となりかねない。

   テテは相手の右ストレート、フックをよける際に、体を左側に沈めてよける傾向にある。しかも、足幅のスタンスを広くとっていることからその体勢からバックステップを踏むことは難しい。相手のパンチが単発で終われば問題ないが、井上のように多彩なコンビネーションを持つボクサーの二の矢、三の矢を防ぎきることが出来るかは大いに疑問が残る。対戦を想定してみると、おそらく井上のワンツーからの左フック、もしくはボディーで試合が決まってしまうのではないだろうか。

   テテ、ネリしかり、いずれも井上との対戦に強気な姿勢を見せるが、井上は今や世界のパウンド・フォー・パウンド(PFP)上位のボクサーだ。現状、世界のバンタム級で井上に黒星を付けるような選手は見当たらず、テテも遠く及ばないだろう。

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