2019年6月23日に放送されたNHKスペシャル「スペース・スペクタクル」が視聴者の間で話題だ。
同スペシャルは全4回。第1回となる23日の放送のタイトルは「宇宙人の星を見つけ出せ」で、宇宙に無数に存在する太陽よりも小さな恒星「赤色矮星」の周囲に存在する地球型惑星に生命が存在する可能性について考察した。最新科学による検証で予想した異星の生物をCG動画の中に登場させ、地球のような命の星が存在する可能性に言及したが、その一方で視聴者の心を捉えたのは、2年前に太陽系を通過していった小天体について説明するVTRだった。
その名は「オウムアムア」
番組前半で紹介されたのは、2017年9月に太陽の付近を通過したオウムアムアという名の小天体。長さは約400メートルの棒状で、軌道を観測した結果、太陽系の外から飛来した天体であることが分かったという。VTRでは「オウムアムア」が初の太陽系外から飛来した天体との説明がなされたほか、オウムアムアを観測した学者の内の1人であるハーバード大学の天文学科長であるアブラハム・ローブ(Abraham Loeb)氏に実施したインタビュー動画も放送。インタビューでのローブ氏の発言の翻訳として、
「いったい何がオウムアムアを加速させるのか大いに疑問です。これが自然にできるとは到底考えられません。つまり、人工物である可能性が高いのです」(句読点はJ-CASTニュース編集部が追加)
という訳文が表示されたほか、ナレーションでも「物理法則では説明できない謎の加速をしていました」と紹介するなど、非常に興味を掻き立てる構成となっていた。
このため、放送を見た視聴者からは、
「楽しかったです。Nスペ、スペーススペクタクル!夢のある天文学のお話でしたねぇ。やぁ、子供たちにいっぱい見てほしいですねぇ」
「名前からしてエイリアンの宇宙船に間違いない!」
といった声が続々と上がった。
「様々な加速メカニズムが提案されて議論されている状況」
多くの視聴者の好奇心を掻き立てた同番組だったが、番組終了後、番組の「取材協力」のクレジットの欄に名前があった、1人の学者が番組への見解をツイートした。京都大学大学院理学研究科の宇宙物理学教室の佐々木貴教助教は自身のアカウントで、番組への協力を行った際には番組プロデューサーから丁寧な取材があったとしつつも、
「オウムアムアについてはかなりしつこく Loeb 博士を登場させて『多くの科学者が宇宙船であることを認めている』かのような印象を与えており、」
と、番組で紹介されていた「オウムアムア=宇宙船説」の扱いが大きすぎたのではないかとの考えをツイートしたのだ。
そこで、同番組について、どのような表現ならより正確な番組構成になったと思われるかを質問すべく佐々木助教に電話取材を行ったところ、「ほかのツイートも併せてご覧ください」とのことだった。そこで、ほかのツイートを見てみると、オウムアムアの「謎の加速」について、
「様々な加速メカニズムが提案されて議論されている状況です」
と、まだ学者の間で意見が一致する状況には至っていないとの見解が示されていた。
なお、今回の放送を楽しんだ視聴者からも、「Nスペのオウムアムア想像図が攻めすぎな件」と、やや踏み込みすぎではなかったかとする声が上がっていた。様々な声が上がった今回の放送だが、オウムアムアが「太陽系外からの未知の飛来物」というミステリアスな存在だけに、多くの議論を巻き起こしたということだろう。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)