日韓の研究者や国会議員が両国の懸案などについて話し合う「日韓未来対話」(言論NPO、東アジア研究院主催)が2019年6月22日、都内で開かれた。
日韓双方が、両国間の交流や対話が重要だという点では一致した。たが、現時点で最大の懸案でもある、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を下した問題では、認識の差が改めて浮き彫りになった。
「日本側が環境を作ることも必要なのではないか」
徴用工問題をめぐっては、韓国外務省が2019年6月19日、韓国企業と被告となった日本企業が資金を拠出して元徴用工に賠償することに日本側が応じれば、日韓請求権協定に基づく協議に応じるという案を提案。日本政府は直後に「この問題の解決策にはならない」と拒否していた。
朝鮮日報東京支局長の李河遠(イ・ハウォン)氏は、賠償問題は「完全かつ最終的に解決された」とする1965年の日韓請求権協定について、
「(内容が)不足していると思うが、守らなければならないと思う韓国人のひとり」
だとしたうえで、日本企業が中国人元労働者に和解金を支払った事例を念頭に、
「日本(企業)の方で補償が難しい場合は、未来の世代のために関連企業が財団など基金を作って、奨学金を作るとか、若者の交流のために何か活動する姿を示すのも、日本の関連企業が姿勢を示すことを必要なのではないか。日本側が環境を作ることも必要なのではないか」
などと独自のアイデアを披露した。
「『民間で何とかしてよ』では『できるはずがない』」
松川るい参院議員は、
「65年の請求権協定に違反した状態に、判決のせいでなっている。韓国政府の側が関わらないで、何かが解決することはあり得ないと思う。『民間で何とかしてよ』とか、そういう話で、できるはずがない」
として、韓国政府が現実的な解決策を出さない限り事態は進展しないとの見方を示した。その上で、日韓は「戦略的利益を共有できる民主主義国」だとして、対話を呼びかけた。
「もう少し中長期的視点で何とかしたいなと思う。政治家同士の腹を割った話も大事だと思う」
一方、韓国の与党・共に民主党の盧雄来(ノ・ウンンレ)国会議員は
「断定的に『請求権協定の違反』と言ってしまえば、解決が難しくなる。韓国だけの責任で解決はできない」
と主張。日本政府は、韓国が仲裁手続きに応じなかった場合、国際司法裁判所(IJC)への提訴を視野に入れているが、
「私はこれを認めることはできない。『違反である』と言ってしまえば、非常に無責任な結果をもたらすだろう。最悪の結果、例えば(日本企業の資産売却が)執行された場合、(日韓関係は)ただでさえ悪いのに、最悪の関係になってしまう可能性がある」
などと反発した。
韓国は最高裁判決という制約が...
申珏秀(シン・ガクス)元駐日大使は、
「文政権とは全く関係がなく縁もないので、政府を代弁する立場ではない」
としたうえで、韓国政府が置かれた立場への理解を求めた。
「遅れてしまったが、韓国政府がとにかく動き始めた。(中略)韓国は最高裁判決という制約があるので、その限度の中で韓国政府の立場を語らなければならないということを日本政府や国民は理解しなければならない。その土台の上に解決策を模索して、その中で双方の立場の違いを縮める努力が必要だ」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)