国会の会期末を目前に控え、野党側が内閣不信任決議案の提出に向けて最終調整に入っている。
「与野党の攻防は山場」(NHK)との報道もあるが、野党幹部からも「『単に(内閣)不信任を出す』では迫力にも欠ける」との指摘が出ていたなか、果たして「迫力ある提出」にすることができるのか――。
NHK「与野党の攻防は山場を迎えます」
国会会期末が2019年6月26日に迫るなか、24日朝のニュースでNHKは、内閣不信任決議案の提出に向けた野党側の調整などに触れ、「与野党の攻防は山場を迎えます」と指摘した。
その24日、立憲民主や国民民主、共産など野党5党は幹事長・書記局長会談を開き、内閣不信任案の衆院へ共同提出にむけた調整に入った。25日に党首会談を開き、最終的に対応を決める。
この決議案提出に対しては、たとえば国民民主党の玉木雄一郎代表は22日の段階で、提出の必要性に理解を示したうえで、「年中行事のように出すのではなく、本気の不信任案にしなければならない」と記者団に対して語っていた。衆院の解散総選挙の可能性を考えて、野党側が「受け皿」を一致して示さないと、与党側や国民から批判を受けるだろうとして、「単に不信任を出すということは迫力にも欠ける」(22日配信の朝日新聞報道など)と指摘した。
玉木代表が「迫力」に言及した背景には、衆院解散による衆参同日選論が出るなか、準備不足の野党側の中に、内閣不信任決議案の提出が解散を誘発することにならないか、といった警戒感から提出に慎重論が出ていたことがありそうだ。
「乱発で新鮮味が薄れないよう温存」したことも
こうした慎重論は5月からくすぶっていた。衆参同日選が見送られる公算が高くなったとの報道は、6月10日の読売新聞夕刊1面(東京最終版、以下同)などが報じた。その後、16日には立憲民主党の枝野幸男代表が、「解散がなさそうだから(内閣)不信任案を出すと思われるのはしゃくだ」「参院選に挑むので、(衆院への内閣不信任案提出ではなく)参院に問責決議案を出すのが筋ではないか」と、まだ提出に否定的な姿勢を維持。こうした姿勢に対しては、自民党の萩生田光一・幹事長代行が17日、「通常は内閣不信任案を出すのが常で、今回だけ問責というのはどうしてなのか」と皮肉を飛ばしていた。
実際、萩生田氏が指摘するように、野党側が内閣不信任決議案を提出するのは珍しいことでも何でもない。5月15日配信の日本経済新聞ウェブ版記事では、「2018年の臨時国会では乱発で新鮮味が薄れないよう温存した。複数の立民幹部は『今国会では必ず出す』と言い切る」と紹介し、前回提出した18年通常国会の様子にも触れた。この記事でも、今国会では内閣不信任決議案の提出が衆参同日選につながる観測を警戒し、慎重論を唱える「立民の閣僚経験者」がいることが指摘されていた。
今国会の終盤に向け、「衆院解散はなさそう」との流れはさらに加速する。読売新聞が朝刊1面で「衆参同日選見送り」の見出しをつけ、安倍晋三首相が見送り方針を固めたと報じたのは6月20日付紙面。そして、朝日新聞朝刊1面(22日付)の記事によると、枝野代表が内閣不信任決議案を提出する方針を固めたのは21日だ。
25日に野党5党派の党首会談
こうした経緯があるだけに、枝野代表が心配していたように、「解散がなさそうだから(内閣)不信任案を出す」という後ろ向きの印象を与えずに、衆院提出へこぎつけるのは簡単ではなさそうだ。
今国会終盤の6月21日には、麻生太郎・財務相兼金融相に対する不信任決議案が衆院で反対多数で否決され、参院では同じく麻生大臣の問責決議案が否決された。週が明けた24日には参院で、安倍晋三首相の問責決議案が否決された。
野党5党派は25日の党首会談でどのような結論を出すのか。23日放送のNHK「日曜討論」で、自民党の萩生田・幹事長代行は、野党による内閣不信任案が提出された場合について「(衆院解散の)大義になることを否定しない」とけん制していた。