長年、鉄道旅行に欠かせない存在であったJRの車内販売。しかし、ここ数年、JR各社は車内販売を縮小する動きを見せている。縮小の背景には何があるのだろうか。
筆者がこの目で見た海外の事例も紹介しながら、車内販売のあり方についても考えてみたい。
「駅ナカ」の充実の反面、衰退する車内販売
JRの車内販売は衰退の一途をたどっている。JR東日本は2019年3月15日をもって、東北・北海道新幹線の一部区間・列車と特急「踊り子号」をはじめとする多くの在来線特急列車において車内販売を取りやめた。追い打ちをかけるように、5月28日には新幹線、在来線特急列車におけるホットコーヒーのサービス中止を発表した。なお、車内販売の営業を終了する列車や区間でも、グランクラスサービスは継続される。すでに、九州新幹線や東海道・山陽新幹線の「こだま号」では車内販売は行われていない。このように、JR各社において車内販売は冬の時代を迎えている。
車内販売を縮小する背景には「駅ナカ」と呼ばれる駅構内の商業施設の充実が挙げられる。たとえば、東京駅構内にある店舗では全国各地の駅弁を取り揃え、終日にわたって賑わっている。ホットコーヒーのサービス取りやめは売れ残りの処理や衛生面の問題が要因とのこと。また、JR北海道のように会社自体の経営難から車内販売を中止するケースも見られる。
車内Wi-Fi使って簡単注文
それでは海外も日本と同様に車内販売は衰退しているのだろうか。少なくともヨーロッパやロシアでは車内販売は維持、もしくは改良が進んでいる。
たとえば、ロシアの首都、モスクワと第二都市のサンクトペテルブルクを結ぶ高速列車「サプサン号」ではスマホを使った車内販売が展開されている。乗客は車内Wi-Fiを利用し、車内販売の専用ページにアクセス。専用ページには写真入りでコーヒーやチョコレート、軽食などのメニューが表示される。試しに筆者がチョコレートを注文すると、すぐに男性乗務員が品物を持ってきた。
さすがに、日本では全車両においてロシアのようなスマホを使用した車内販売は難しいだろう。グリーン車など車両を限定した上で、スマホを使ったサービスを実施するのも一つの選択肢かもしれない。
長年にわたり、車内販売は鉄道旅行を支えてきた。このまま消滅するのを惜しく思うのは筆者だけではないだろう。
(フリーライター 新田浩之)