フィルム式の一眼レフカメラとモノクロフィルムに関するニュースが相次いでいる。
ニコンが東京都港区のニコンミュージアムで、ニコン初のレンズ交換式一眼レフカメラ「ニコンF」の発売60周年を記念した特別展示「Fヒストリー」を開催し、人気を呼んでいる。富士フイルムは2018年秋に販売を終了したモノクロフィルムを新たに開発し、19年秋にも販売を再開するという。
レンズマウントは「信頼や伝統のシンボル」
ニコンFシリーズはニコン(当時は日本光学工業)が初代モデルを1959年に発売。「プロ、アマチュアを問わず世界中の写真家から愛用されたフィルム一眼レフカメラ」(同社)で、歴代ニコンの旗艦一眼レフカメラとして、初代の「ニコンF」から2004年発売の「ニコンF6」まで、6代続いた。ニコンの一眼レフカメラがデジタルに移行した今も、F6はプロやアマチュア愛好家向けに生産される「現役機」だ。
初代ニコンFに採用したレンズマウント(ニコンFマウント)は、最新のニコンデジタル一眼レフカメラまで60年間にわたり継承されている。ライバルのキヤノンと異なり、ニコンはこのレンズマウントを変えていないため、かつてのフィルムカメラ時代のニッコールレンズをニコンのデジカメ一眼レフでも使うことができる。
このニコンFマウントは「ニコンの信頼や伝統のシンボルとなっている」(同社)のは事実だが、ユーザーの間では「現代のレンズとしては口径が小さい」との指摘もある。ライバルのキヤノンはデジカメ時代に合わせて口径の大きな新レンズを開発し、これに合わせてマウントも変えたためレンズの互換性はなくなったが、大きく世代交代を遂げた。ニコンはプロユーザーを多く抱えるため、レンズマウントを簡単には変更できなかったといわれている。
そんなニコンF誕生60周年の記念展示には、「ひと桁シリーズ」と呼ばれる歴代Fシリーズが並び、報道カメラマンらに愛されたニコンFシリーズの歴史を学ぶことができる。展示は20年3月下旬まで。
フィルム愛好家から「販売継続を望む声」が
一方、富士フイルムが昨秋終了したモノクロフィルムの発売を今秋再開するのは、現在もフィルムカメラの愛好者が存在する証拠だろう。復活するのは富士フイルム伝統のモノクロフィルムブランド「ネオパン」。新たなネオパンは「ネオパン100 アクロスII」として新開発。19年秋に35ミリサイズとブローニーサイズの2種類を発売する予定という。
富士フイルムは需要減少と、生産に欠かせない原材料が入手困難になったため、昨秋にモノクロフィルムの販売を終了していた。しかし、「フィルム愛好家をはじめ独特の風合いによる写真を好むSNS世代の若年層を中心に、当社の白黒フィルムの販売継続を望む声が多く寄せられた」という。入手困難になった原材料については「代替品の研究や新たな原材料に合わせた製造プロセスの抜本的な見直しにより、アクロスIIの開発に成功した」というから、愛好者には朗報だ。
富士フイルムはアクロスIIについて「世界最高水準の粒状性と立体的な階調再現で超高画質を実現し、幅広い分野の撮影に適している」と説明している。
現在もF6を生産・販売するニコンと並び、日本を代表するフィルムメーカーがモノクロフィルムの販売を再開してくれることで、暗室にこもりモノクロ写真を現像する楽しみは今後も続けられそうだ。