「羊羹(ようかん)は30年持つ」という説が、2019年6月中旬から、にわかにネットで拡散している。それによれば「羊羹は賞味期限をとりあえず1年としているが、実際には30年持つ」ということだそうだ。
この拡散された言説に派生して「登山や災害の保存食に有用」「19年前のものでも食べられた」という話もネットに広まった。しかしこれらの噂に対し、「安易な過信は危険」「食中毒のおそれもある」と警鐘を鳴らす意見も共有されている。
羊羹が30年持つという根拠は何なのか。J-CASTニュースはある老舗の和菓子メーカーに、専門的な見解を取材した。
砂糖が水分と結びつき、長持ちするが...
取材に応えたメーカーは、まず羊羹にも煉(ねり)羊羹・蒸(むし)羊羹などいくつかの種類もあり、その中で賞味期限が最も長いのは、煉羊羹だとした。他の羊羹では原材料や製法によっては短い賞味期限のものもあるとした。
「あくまで自社の商品に限って」という前提で、このメーカーが製造する煉羊羹は砂糖を多く含み、全重量の60%ほどを占める。煉羊羹はもともと長時間加熱することにより水分が少なくなる。砂糖には水分と結びつきやすい性質があるため、水分が吸収される。さらに煉成後熱いうちに密閉されるため、酸素が遮断されて細菌やカビが極めて繁殖しにくい。これが長持ちする理由だそうだ。
しかしその煉羊羹でも、メーカーが定めた賞味期限は「未開封で製造から1年間」。未開封で保存状態がよければ、さらに1年は食べられる。しかしそれ以後の品質は保証できないようで、「本当に30年経ったものでも食べられるか」については、
「実際に過去に長期間保存された羊羹を召しあがられたという事例もございました。その事例では、保存環境がよかったので食べることは可能でしたが、一般的には、蜜が多く出たり、砂糖の再結晶化や色が若干変色したりと、変化が生じる場合が多いので、『おいしさ』の観点からも、おすすめできません」
という答えだった。あくまで保存環境がよければ、ということであるし、風味も落ちるので勧められない。