中国の習近平主席が2019年6月20日に北朝鮮の平壌を訪れ、朝鮮労働党の金正恩委員長との首脳会談に臨んだ。その様子を中国の国営メディアは同日夜に伝えたが、北朝鮮の国営メディアが報道したのは翌6月21日午前。その報道内容にも大きな違いがあった。
北朝鮮をめぐる国際社会の最大の関心事は朝鮮半島の非核化問題のはずだが、北朝鮮メディアはそれも「スルー」。米朝交渉が難航する中、立場の表明に慎重を期している可能性もありそうだ。
正恩氏「当事国から前向きな反応が得られなかった」と不満
中国の国営メディア・新華社通信によると、首脳会談の席で習氏は
「朝鮮半島の平和と安定を維持し、半島の非核化を促進するための北朝鮮の努力を高く評価」
した上で、
「国際社会は米朝間の対話が前進し、成果が出ることを期待している」
「中国は、朝鮮半島の半島の非核化と地域の長期的な安定を達成する上で前向きかつ建設的な役割を果たす用意がある」
と話し、非核化に向けたプロセスに関与していく考えを示した。これに対して正恩氏は
「北朝鮮はこの1年、朝鮮半島で緊張を回避し、状況をコントロールするため、多くの積極的な措置をとってきたが、当事国から前向きな反応が得られなかった。これは当方が見たいものではなかった。北朝鮮は辛抱強く待つ用意がある。関係国は、北朝鮮と連携してそれぞれの懸念に対する解決策を模索し、対話プロセスの結果が出るように後押ししてほしい」
などと話したという。名指しこそしないものの、米国の強硬姿勢に不満をもらすような発言だ。
「友好」の協調に留まった北朝鮮メディア
こういった発言は、北朝鮮メディアでは報じられなかった。6月21日の10時頃(日本時間)、朝鮮中央通信や労働新聞は、習氏の訪朝について(1)平壌到着(2)首脳会談(3)歓迎会(4)マスゲーム観覧(5)党幹部との記念撮影、の5本立てで記事を配信。首脳会談の記事では、両国の友好・協力関係を強調する記述が大半で、
「朝鮮半島情勢をはじめとする重大な国際・地域問題について幅広い意見交換」
することが「両国の共同の利益に合致」するとの記述はあったものの、
「会談は、同志的で、真摯で率直な雰囲気の中で行われ、論議された問題で共通認識に至った」
などとして、個別具体的な政策課題に触れることはなかった。
なお、5本の記事の中で唯一「核」という単語が登場したのは、歓迎会での
「社会主義こそ朝中親善の変わらない核であり」
という部分。核問題とは全く関係ない文脈だ。
習氏は6月21日に北京への帰路に就く予定だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)