韓国大法院(最高裁)が日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を下した問題で、韓国側の迷走ぶりに拍車がかかっている。韓国外務省は2019年6月19日、韓国企業と被告となった日本企業が資金を拠出して元徴用工に賠償することに日本側が応じれば、日韓請求権協定に基づく協議に応じるという案を提案した。
日本政府は、当初からの日韓請求権協定に基づく協議を求めているが、韓国はそれに応じないまま、まったく違う方向の「提案」を出してきたことになる。日本側は直後に「この問題の解決策にはならない」と拒否することを表明した。ただ、韓国政府は、日本側が即座に拒否することを見越して、わざわざ提案した節がある。なぜそんなことをする必要があったのか。
外務省報道官「事前に我が方に伝達があり、すでに日本の立場も伝達してある」
日本政府は19年1月に協定に基づく「政府間協議」を要請してきたが、韓国側が応じないため、第三国を交えた仲裁委員会の設置を韓国政府に要請していた。協定では韓国が6月18日までに仲裁委員会の委員を任命する義務を負っている。韓国はそれにも応じなかったため、日本側は6月19日、委員3人の選任を第三国に委ねる協定上の次の手続きに移行することを韓国政府に通告していた。そんな中での、日本企業に対して支出を求める「提案」だ。当然、日本側はこの提案を拒否。河野太郎外相は、
「これは韓国の国際法違反の状態を是正することにはならず、この提案は受け入れられません」
とツイートした。
外務省の大菅岳史外務報道官は韓国側の発表後の6月19日夕方に行われた記者会見で、
「韓国側からは、今回の発表について事前に我が方に伝達があり、すでに日本の立場も伝達してある」
と述べている。中央日報が
「この主張通りなら、韓国政府は、日本側がすでに拒否の立場を明らかにしたにもかかわらず、関連の提案を発表したことになる」
と指摘しているとおり、韓国メディアでは、この「提案」の意図をめぐる様々な説が出ている。