「保釈」に注目が集まっている。きっかけの一つは、控訴審中に保釈されていた実刑確定者が収監に抵抗して刃物を持って逃走した事件だ。
そしてもう一つは、逃走事件発生の前日、NHK番組が「(保釈中の被告が)逃走どころか再犯も」という過去の事例を放送中に、新潟県で最大震度6強を計測した地震が発生して番組は中断、地震特番に切り替わったという偶然。逃走事件を受けて関心が高まり、「(NHKは)再放送をするのかな」と気にする人も出ている。
日本の司法制度がテーマ
逃走事件は2019年6月19日昼、神奈川県内で起きた。窃盗や傷害、覚せい剤取締法違反などの罪で実刑が確定した小林誠受刑者(「元被告」と表記するメディアも)が、収監するために訪れた検察庁の職員や警察官に対し、刃物を振り回して抵抗し、車で逃走した。警察が行方を追っている。
1審で実刑判決(18年9月)が出たが控訴し、その後に保釈された。19年2月、東京高裁が控訴を棄却して懲役3年8か月の有罪判決が確定。実刑の確定を受け、検察職員が何度も収監しようとしていたが、これまでは接触できていなかった。
一方、「保釈か勾留か」と日本の司法制度をテーマにして6月18日22時から放送を始めた番組は、NHK「クローズアップ現代+」だ。被告の保釈を認めることに厳しい現状に対し、「人質司法」との批判が国内外から出ていることや、その現状にも変化の兆しが出ており、保釈される人の割合が増えていることを紹介。さらに、保釈中の被告が逃亡したり、新たな事件を起こしたりケースも「相次いでいる」問題点も取り上げた。
画面では18日22時20分頃、「逃亡どころか再犯も」と文字表記があり、2年前に不審火が相次いでいたとして、家屋が燃え上がる映像が映っていた。そこに、緊急地震速報を伝える画像が画面中央部に現れ、ほどなく番組は中断され地震特番へ移行した。
「保釈への疑問」や「保釈への批判的な見方に懸念」
偶然ながら「(被告が)逃亡どころか再犯も」が印象に残るタイミングで番組が中断され、さらにその翌日、保釈された後に実刑が確定した男が収監に応じず刃物を持って逃走したニュースが報じられた。
20日に投稿されたツイッターには、「保釈中に逃走・再犯」のキーワードなど18日夜の「クロ現+」内容と、地震による番組中断に触れて、
「再放送するのかなあ」
といったつぶやきも見受けられた。
「保釈」そのものにも注目が集まっている。ツイッター上では、今回の逃走者について「なんで傷害、窃盗、覚せい剤取締法違反で保釈するの?」などと保釈決定に疑問を呈する声が出る一方、今回の逃走事件を受け、「(警察・検察と)裁判所が『だから保釈はするべきじゃない』と考えなきゃいいが...」と、保釈が認められるケースが増えている傾向に水を差すことにならないか、と懸念を表明する意見も寄せられている。
なお、「クローズアップ現代+」の番組サイトによると、18日夜に中断となった当該特集は22日未明(1時40分から)に改めて放送する。