安倍晋三首相と野党党首による党首討論が2019年6月19日、約1年ぶりに開かれた。約50分にわたって行われた討論の大半の時間が、金融庁審議会の報告書に端を発する「2000万円問題」に費やされた。
野党党首は年金問題に対する政府に認識を質したり、報告書を受け取らないとする政府の姿勢を批判したりする一方で、医療・介護などの自己負担額の合計に上限を設ける「総合合算制度」の導入など対案にも言及。「批判一辺倒」だとする指摘に配慮したとみられるが、それでも日本維新の会の片山虎之助共同代表は「野党も非難するだけじゃダメなんですよ」と発言。議場からはひときわ大きなヤジが飛んだ。
議論かみ合わず「全く答えをスルーされた」
党首討論の野党側には、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の片山氏が登場。それぞれ20分、14分、5分30秒、5分30秒が割り当てられた。
枝野氏は、「低年金であっても資産がなくても、万一のときに一定の医療や介護が受けられる安心」の重要性を強調しながら「総合合算制度」の導入を訴えたが、安倍氏は安倍政権で正社員が増えて保険料収入や税収が増えたことを説明。議論がかみ合うことはなく、枝野氏は
「全く答えをスルーされた。(総合合算制度は)いっとき導入の方向で話が進んでいたものが、軽減税率の財源にするために、実施されないという流れになったことは付記しておきたい」
と憤懣やるかたない様子だった。
玉木氏は、年金制度の持続性を疑問視しながら、「どういう年金の姿になっているのか、正直に語る政治」の重要性を訴え、
「国民民主党としても、家計第一の経済政策をしっかり掲げて、子育てや家賃補助、こういったことをきめ細かく対応していく」
などと話したところで時間切れに。志位氏は、高額所得者層の保険料の上限を引き上げ、高額所得者への給付の伸びを抑制する仕組みを導入すれば、限られた保険料の範囲で年金の給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」を撤廃できると主張。安倍氏は「ちゃんと計算しなければ、その数字は明らかではない」などと財源を疑問視した上で「ばかげた案」だと突き放した。
野党の敵は「ゆ党」?
最後に登場した片山氏が口にしたのが衆院解散の話題だ。野党による問責決議案や不信任決議案をきっかけに解散する可能性について、安倍氏は「頭の片隅にもない」などと否定。
報告書をめぐる政府の対応については、
「受け取ったらいいじゃないですか?受け取ったら困るんですか?あるいは直したらいい」
と苦言を呈した。
この時点で時間切れだったが、片山氏は野党についても
「もう時間がありませんが、申し上げますがね、年金についてね、野党も非難するだけじゃダメなんですよ。具体の提案をしないと。具体の建設的な論議をしないと、そりゃダメなんですよ。我々は検討してますから、みんなで議論すべきだと思います」
などと非難。「そうだ!」という声とヤジが交錯し、議場は騒然となった。与党でもなく野党でもない「ゆ党」としての立ち位置を改めて鮮明にしたと言えそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)