2019年6月18日深夜、山形県沖を震源として発生した地震。新潟県村上市では最大震度6強を観測した。気象庁は地震のメカニズムを、西北西と東南東それぞれの方向から力が働き、断層が上下にずれる「逆断層型」としていた。
ネット上では「人工地震だ」とするデマ情報が出回わり、まとめサイトに情報が掲載されていた。一方、「人工地震」という説に「そこに住む人の気持ちを踏みにじっている」と非難する声も上がった。
地震直後には「まとめサイト」にも
気象庁によると、地震発生日時は18日22時22分だった。発生後、ツイッター上では
「新潟で震度6強人工地震!?!?(中略)自然を玩ぶと、地球が滅ぶぞ・・!安倍晋三!」(18日22時31分)
「"金融庁2000万円報告書"の騒動をかき消すためにドンピシャのタイミングで地震を起こしやがった...。18 22 22 こんな露骨な数字なら素人でも人工地震だとわかる。ホントに怖いね、安倍政権は」(18日23時49分)
「この地震が発生する1年前、大阪北部で地震が発生。そのちょうど1年が経った後にまた大きな地震が新潟にありました。こんな偶然は考えられず、これもまた人工地震だと考えられます」(18日23時49分)
「今回の #人工地震 の目的は、#年金問題 の火消しでしょう」(19日0時05分)
など、「安倍晋三政権が人工地震を起こした」という趣旨の投稿が一部で出回っていた。J-CASTニュースでは、18日の地震発生直後から19日昼までの「人工地震」だと指摘する投稿を調べたところ、数百~数十の間でリツイートされていた。
「人工地震」を指摘する一連の投稿は、まとめサイトなどでも紹介されていた。あるサイトでは、「山形県沖の珍しい地震で津波発生!安倍政権の人工地震か?」と題した記事を公開。「人工地震」を指摘する趣旨の投稿を紹介して広めていた。
芸能ブログを称する別サイトでも、「山形県沖地震は安倍晋三が悪い?人工地震で総理が年金問題うやむや?」と題する記事を公開していた。同じく「人工地震だ」と指摘するツイッターの投稿を紹介し、広めていた。こちらの記事の公開日時は18日となっており、まだ津波注意報も解除されないうちから、こうした情報を流布していたことになる。
反論の声「そこに住む人の気持ちを踏みにじっている」
もちろん、こうした説には明確な根拠がない。ネット上で「人工地震」だとする声が上がっていることについて、気象庁地震津波監視課の担当者も19日、J-CASTニュースの取材に対し「自然が起こした地震です」と否定した。
「人工地震だ」と指摘する声に対しては、反論も出ていた。新潟に住むと名乗るツイッターユーザーは19日2時5分ごろ、ツイッター上で投稿し、
「今回の地震をやれ人工地震だのやれスピンだのなんだのめちゃくちゃな陰謀論言うのマジでやめてもらっていいですか。そういうデマが蔓延するとろくなもんじゃない。なによりそこに住む人の気持ちを踏みにじっていることを分かってください」
と「陰謀論」を唱える人を強く非難。投稿は19日昼時点で、1500以上リツイートされていた。「人工地震」を「不謹慎」だと指摘する発言も上がっていた。
大規模な地震が発生した際、これを「人工地震」だと主張し、なんらかの陰謀によるものだ――とする言説は、これまでもたびたび拡散してきた。特に2011年の東日本大震災以降は、こうした説がしばしば飛び交う状況だ。
一方で、人工地震の存在を真剣に信じているようなツイートは決して多数派とは言えない。むしろ上記のような批判や、「陰謀論」として揶揄するような発言、あるいはあえて「ネタ」として「人工地震だ!」などと吹聴するツイートが、より広く拡散されている。こうした投稿がけん引する形で、「人工地震」という言葉は、19日午前~昼ごろにかけトレンド入り(日本)していた。
ネタとして楽しんでいるのかもしれないが...識者「真に受けてしまう人も」
ITジャーナリストの井上トシユキさんは19日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように警鐘を鳴らした。
「発想やストーリー構成のおもしろさを純粋に笑って楽しんでいる人もいるが、真に受けてしまう人も出てきてしまう。情報拡散する時には、本当に裏の取れている、公的な機関が発表しているような情報なのか、ネット上でおもしろがって誰かが言っているだけのものなのかは、できる限り確かめてから情報拡散する癖を付けなきゃだめだと思います」(井上さん)
地震の予知について、気象庁はホームページで「現在の科学的知見からは、そのような確度の高い地震の予測は難しいと考えられています。以上により、一般に、日時と場所を特定した地震を予知する情報はデマと考えられます」などと見解を示している。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)