0-4の敗戦に終わったサッカー日本代表の南米選手権(コパ・アメリカ)初戦・チリ戦は、1トップに抜擢されたFW上田綺世(あやせ、20・法政大)が再三の決定的チャンスをモノにできず、インターネット上で批判も飛び交った。
上田には何が足りなかったか。元日本代表で解説者の名良橋晃氏(47)はJ-CASTニュースの取材に「味方がパスを出したくなるような動きはできていた」と評価する一方、「『余裕』がなかったように見える」と話す。
「90分を通すとチャンスがなかったわけではありません」
チリ戦は2019年6月18日(日本時間)に行われ、東京五輪世代(現U-22)中心のメンバーで挑んでいる日本は無得点・大量失点という厳しい船出となった。ただ、名良橋氏は「スコア上は『完敗』でしたが、ある意味『悔しい敗戦』だったと思います。90分を通すとチャンスがなかったわけではありません」と話す。
確かにチャンスはあった。0-1で迎えた前半44分、相手のパスミスを見逃さなかったMF柴崎岳(27)がダイレクトで最前線へスルーパス。これにオフサイドラインギリギリで反応したのが上田だ。GKアリアスと1対1の絶好機を迎えたが、シュートは枠外のサイドネットを虚しく揺らした。
0-2の後半12分は、敵陣右サイドでボールを奪った柴崎が中央へクロス。逆サイドにフリーで走り込んだのもまた上田だったが、ボレーシュートは枠外に飛んだ。同24分には途中出場のMF安部裕葵(20)が敵ペナルティエリア内の左サイドを抜け出し、中央へ早いクロス。これにも逆サイドの上田が飛び込んだがわずかに届かなかった。同30分にも、中央への縦パスに反応した上田がGKと1対1でシュートしたがセーブされた。
決めきれなかった要因
上田は少なくとも4度の決定機に絡んだが、いずれもゴールはできなかった。厳しい声もあがっているが、相手は王者のチリ。裏を返せば強豪相手に「あと一歩」のところまで来ているという見方もできる。名良橋氏は「それほど悲観する必要はない」として、次戦にも期待を込める。
「上田選手は動き出しなどで際立つプレーや、ゴールを狙って先を読む力が見られました。味方がパスを出したくなるような動き方が随所でできており、トラップのコントロールも悪くなかった。
決め切れなかった要因としては、『余裕』がなかったように見えます。初のA代表、初スタメン、相手は南米の強国――そういう状況に気圧されたのか、最後の局面で良い意味の『余裕』が持てず、シュート精度に影響した部分もあるでしょう。
GKの違いもあります。普段相手にしている大学生のGKなら1対1の局面ですぐに倒れているところが、チリのGKアリアスは最後までどっしりと構え、立ちはだかりました。
そうした普段との違いをどう解釈し、プレーに反映させていくか。1つ試合に出て南米相手の試合の雰囲気を感じたことで、修正できる余地はあるでしょう」
味方との「距離感」が良くなった久保
攻撃陣は久保も決定機を作った。後半20分には左サイドのペナルティエリア手前で短いパスを受けると、相手3人に囲まれながらドリブルでかわしてシュートに持ち込んだ。名良橋氏は久保のプレーをこう分析する。
「久保選手がチャンスを作れた要因は、味方との『距離感』が良くなったことだと思います。距離感が良くなればパスのテンポも上がるし、ドリブルだけでなくショートパスを交えた局面打開もできる。
前半は味方との距離感が良くなく、久保選手は単独でドリブルを仕掛けるばかりになっていました。後半に入り、阿部選手、三好(康児)選手が途中投入されてからは良い距離感をもっていたと思います。ここにサイドバックも絡めば、さらに中か外かという選択肢も生まれます」
ただその後半、平均年齢22.3歳の若い日本は37、38分と立て続けに3、4点目を失った。「3点目が入ったあたりで気持ち的にも沈んでいましたね。悪い方に『若さ』が出た試合だったと思います。こういう時、今日も素晴らしいプレーをしていた柴崎選手や、途中出場の岡崎(慎司)選手らが引っ張っていくとチーム全体が落ち着けると思います。上田選手や久保選手はじめ若い選手の良さをもっと引き出すには、そういった経験豊富な選手の力も必要です」と名良橋氏。GLはあと2戦ある。森保一監督が掲げる「若手とベテランの融合」が今まさに試される。
(J-CASTニュース編集部 青木正典)