体調不良を訴えたにもかかわらず救急搬送されなかったとして注目を集めた、トルコ国籍のクルド人男性、チョラク・メメットさん(39)が2019年6月17日、収容先の東京出入国在留管理局(旧東京入国管理局=東京入管、東京都港区)から、一時的に拘束を解く「仮放免」をされた。
18年1月に収容されてから、約1年5カ月が経過していた。メメットさん一家が繰り返し申請していた難民認定については、メメットさん1人だけ不認定となった。
メメットさん「本当にありがとうございました」
メメットさんについては3月、本人が体調不良を訴えたにもかかわらず、搬送されなかったとして議論を呼んだ。ツイッター上では当時、入管側の対応を問題視する声が相次いでいた。一家5人は2014年12月に在留特別許可をしない処分が出された。親子は処分撤回や在留特別許可を求め、国を相手にした訴訟を18年12月に起こしていた。次の裁判は、19年7月12日に予定されている。
6月17日午後、妻のヤスミンさんと腕を組んで建物から出てきたメメットさんは、一瞬青空を見上げ、三男と抱き合い、笑みを浮かべていた。報道陣に対してメメットさんは、「本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします」と弁護士や支援者、ボランティアやマスコミへのお礼を述べた。
代理人の弁護士によると、仮放免の理由について入管側の職員に聞いたが「いくつかあるが教えられない」と言われたという。
仮放免と「難民不認定」が同時、代理人「経験したことがない」
少数民族のクルド人はイランやイラクなどで生活をしてきたが、暮らしてきた場所が分断された歴史がある。メメットさんの家族の中には、クルド人の独立国を求める党を支援する人もおり、トルコに戻れる状況ではないという。
一家5人は、4回目の難民認定申請をしていたが6月17日、夫のメメットさんだけ不認定の決定が出された。仮放免と同時に不認定の決定を出したことについて、代理人弁護士は「今まで経験したことがない」と驚く。ほかの4人について結果は出ていない。
代理人弁護士によると、メメットさんは収容中、入管側から難民申請に関するインタビューをする旨を言われていたが本人の体調が悪いため、問題にせず延期してくれていたという。
「普通は家族一緒に(難民認定申請について)判断するのが普通なのに、本人だけそういう(不認定の)決定をした。いくつもおかしな点がある。入管としては仮放免許可についての報復というか、『仮放免はするけど難民や在留に関しては全く許可することはない』という意思を示したかったのではないか。審査請求という申し立ての手続きもあるし、奥さんやお子さんについては何も結果が出ていない。手続きを進めたい」(代理人弁護士)
東京出入国在留管理局総務課の広報担当者は17日、J-CASTニュースの取材に対し、「難民認定申請の中身や理由等については、第三者の方にはお話は差し控えさせていただいている」と答えるに留めた。
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)