フランス政府の「過剰介入」が改めて露呈
一方で今回明らかになったのは、ルノーの経営に対するフランス政府の過剰なまでの介入姿勢だ。もともと国営企業だったルノーに対して、フランス政府は15%を出資。長期保有株主の議決権を2倍にするフランスの国内法「フロランジュ法」によって、議決権ベースでは3割弱を握っている。
伝統的にフランスでは、政府が産業に対して影響力を及ぼして国内雇用や国益を守ろうとしてきた。しかも、富裕層に恩恵を与えていると受け止められているマクロン政権には労働者層の不満が高まっており、産業政策で国民の歓心を得ようとする傾向は強まっている。
フランス政府はルノーに対しても、連合を組む日産との関係を「不可逆的なもの」にするよう要請しており、これに従ってルノーは日産に経営統合を求めてきた。日産社内には、ルノーとFCAの経営統合交渉が進めば、日産に対する圧力はしばらく落ち着くと期待する声もあったが、今後は再び日産に対する圧力をフランス政府主導で強めてくる可能性がある。今回の一連の動きによって、たとえ日産がルノーと何らかの合意に達しても、フランス政府に覆される可能性も再認識された。
日産経営の今後の舵取りは一段と難しさを増しているようだ。