広告ビジネスまだ未成熟...手出しにくい民放
ただ、同時配信はNHKだけでなく民放にも認められたが、民放各局は今のところ及び腰で、逆にNHKの肥大化への警戒心を強めている。大久保好男・日本民間放送連盟会長(日本テレビ社長)は改正法成立前夜の27日の定例会見で、「NHKの配信業務の事業費が無制限に拡大したら、民放から見て『肥大化』につながる」と牽制。TBSの佐々木卓社長は、改正放送法の成立直後にあった29日の定例会見で、「僕ら民放はとても(常時同時配信は)ビジネスにならないが、民業圧迫をしないでほしい。今後のNHKの進め方を注視したい」と警戒心を露わにした。
民放側の懸念の根底にあるのは財政力の差だ。NHKの受信料収入は7000億円を超える。これに対し、CM収入に頼る民放は景気などに左右されやすい体質で、東京の民放キー局でも年1000億~3000億円の放送収入から新サービスへの投資をしなければならない。民放も同時配信を試験的に実施しているが、視聴者や広告主のニーズはまだ低く、ビジネスとして成り立たせる状況にはなっていない。採算性を民放ほど気にしないでいいNHKが配信事業を野放図に拡大すれば、メディア全体の競争をゆがめかねない――民放側にはそんな警戒感がある。