日韓関係が悪化する中で、両国の国民が互いに対して持つ感情が、対照的な変化を見せている。日本のNPO法人「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院(EAI)」が2019年6月12日に発表した「第7回日韓共同世論調査」の結果で明らかになった。
日本観光を楽しむ韓国の若者が増えていることが背景に、日本に対して良いイメージを持つ韓国人が増えている。半面、韓国に対して良いイメージを持つ日本人は減少している。韓国旅行する日本人も大幅に増えているのになぜなのか。
「過去最高を更新した渡航者数と若年層の改善」
18年に韓国から日本を訪れた人は5.6%増の753万8952人で過去最高を記録し、日本から韓国を訪れた人は前年比27.6%増の294万8527人と、政府統計で大幅な伸びをみせている。これが影響したとみられるのが、今回の調査の
「あなたは、相手国に対してどのような印象を持っていますか」
という問いに対する韓国側の回答だ。韓国では、日本に対して「良い印象を持っている」と答えた人が前年比3.4ポイント増の31.7%で、13年の調査開始以来最高を記録。逆に「悪い印象を持っている」は0.7ポイント減の49.9%で、過去最低だった。言論NPOでは、その理由として「過去最高を更新した渡航者数と若年層の改善」を挙げている。
半面、日本では、韓国に対して「良い印象を持っている」が2.9ポイント下がって20.0%と過去最低を記録。「悪い印象を持っている」は3.6ポイント多い49.9%だった。
この1年の日韓関係で大きな障害になったのが、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対して元徴用工らへの賠償を命じる判決を下した問題と、韓国海軍の駆逐艦が海自機に火器管制レーダーを照射した問題だ。この両方の問題で、両国民の見解は真っ向から対立している。
元徴用工をめぐる判決については、日本では「評価しない」が58.7%だったのに対して、韓国では「評価する」が75.5%。レーダー照射の問題では、日本で「日本政府の主張が正しいと思う」が62.9%だったのに対して、韓国では「韓国政府の主張が正しいと思う」が61.9%だった。
徴用工・レーダー問題、日本の方が深刻に受け止める
「現在の日韓関係についてどう思いますか」という問いには、日本では63.5%が「悪い」と答え、前年より22.9ポイントも増えた。韓国で「悪い」と答えたのは11.3ポイント多い66.1%だった。「悪い」と答えた人の伸び率は日本の方が圧倒的に高く、日本の方が元徴用工・レーダー照射の問題を深刻に受け止めているとみられる。
韓国に行く日本人が増えたにもかかわらず日本人の対韓感情が悪化した背景には、現地の観光で得られたポジティブな感情を、両問題をめぐるネガティブな感情が上回ったことがあるとみられ、言論NPOの工藤泰志代表も
「基本的に、そういう整理しか今回はできない」
と話す。工藤氏は、民間交流が「今、かろうじてクッション役になっている」とも話すが、
「民間、市民レベルでの交流は大事だ。どれだけ政府(間の関係)が悪化しても、それを抑え込む力がある。だけど、今はギリギリだという実感がある」
と危機感を募らせていた。
調査は日本では5月18日から6月3日まで訪問留置回収法、韓国では5月15日から5月27日まで調査員による対面式聴取法で行われた。有効回答数はそれぞれ1000、1008だった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)