なぜ河野外相はツイッターでウケるのか ポイントは「意外さ」「即レス」「いじられ力」

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   いま、日本で最注目の「インフルエンサー」は、河野太郎外務大臣(56)ではないか。公務の合間をぬって投稿される硬軟あわせたツイートには、現役閣僚らしからぬスピード感とユーモアがあり、一般層にもじわじわと人気が高まっている。

   では、なぜ河野外相のツイッターがウケるのか。ネットメディア編集者の視点から分析してみた。

  • 「ベーコン」発言翌日には、パリのOECD閣僚理事会へ(外務省Flickrより)
    「ベーコン」発言翌日には、パリのOECD閣僚理事会へ(外務省Flickrより)
  • 「お に い さ ま」と強調
    「お に い さ ま」と強調
  • 「ベーコン」発言翌日には、パリのOECD閣僚理事会へ(外務省Flickrより)
  • 「お に い さ ま」と強調

「ベーコンの秘密」と「対応を指示しました」

   やわらかネタの代表例は、2019年5月から話題の「ベーコンの謎」だ。「朝の3時半に帰宅したら、愚息が全力でベーコンと叫んでいた。どうしたいんだ?」とのツイートに始まり、「ああ、ベーコンは、結局、^%£$+*・!%」などと暗号のような投稿を行ったことから、仏AFP通信や英BBCといった海外メディアも「謎めいたツイート」と報じた。6月8日になって、19日の動画生配信で「ベーコンの秘密」について明かすと告知し、ふたたび「国家機密が明かされる...」と話題になっている。

   一方で「本業」へのSNS活用も積極的だ。6月上旬には、旧姓併記のパスポートは渡航先で不便だと語る一般ユーザーに対して、「対応を指示しました」と引用リツイート。他のユーザーからも「SNSも捨てたもんじゃないって思える」といった好意的な声が出た。

   ノリの良さにも定評がある。ツイッターユーザーのモサオさん(@masuo666)が6月6日、

「もしこのツイートが河野大臣にリツイートされたら、河野大臣の凄いところ100個言います」

とつぶやいたところ、河野氏本人に「そんなもので足りるか」と引用リツイートされた。モサオさんは当時を振り返り、「いかん。本当にきてしまった。しかし、言ってしまった手前やらないわけにはいかない」と思ったと、J-CASTニュースの取材に話す。

どんなところが「すごい」のか

   その後、有言実行するように、モサオさんは「すごい所」を続々と上げる。

「ネクタイの種類が凄い」
「カレーを美味しそうに食べてて凄い」
「ベストメガネドレッサー賞受賞して凄い」
「命をかけて肝臓のドナー提供してお父さんの命を救って凄い」

   その最中にも、河野氏は「おっ、やっと四分の一ぐらいきたかな」と気にかけ、2日後に100個目へ到達すると「凄いね。あとはしばらく休んでからでよろしい」とねぎらいの言葉をかけた。完走した感想をモサオさんに聞いてみた。

「マラソンを走りきった時のような、達成感にあふれた感覚です。途中苦しい時間もありましたが、多くの方が声援をくださり、最後まで走り切ることができました。感謝しています」

   ちなみに100個あげた中で、一番すごい所は「福耳」だそうだ。

「あれほどの福耳は今まで見たことがなかったので、本当に凄いと思います」

かつては「炎上」イメージがあったが...

   河野氏は、政治家としてはかなり早い段階からネットを活用していたが、かつては「炎上」イメージがあった。小泉政権時代の06年、竹中平蔵参院議員(当時)が、小泉純一郎首相の退陣に合わせ、任期を4年近く残して議員辞職すると発表。これに河野氏がブログで「ふざけるんじゃねえ!」「なにをぬかしやがる」「有権者をなめんじゃねえ」などとかみつき、「下品すぎ」「言葉が汚く、不愉快」と非難されていた。

   また、父親の河野洋平氏(宮澤内閣の官房長官)が1993年に発表した「河野談話」をめぐって、一般ユーザーから「あ、従軍慰安婦問題の嘘を広めた野郎だ!」と言われ、「俺がなにかしたか?」と怒りまじりのツイートをすることもあった。

   その後、15年10月に初入閣(行政改革担当相)、17年8月に外相就任。報道陣相手では、18年12月に「次の質問をどうぞ」を4連発して問題視されたが、ネット上では感情表現が軟化し、端的に返す「芸風」が定着していった。19年6月上旬のツイートを例に出すと、

「いつ寝てるの?」と問われ「今」
「どこ住んでるんだろう」と問われ「うち」
「かわの?なのか、こうの?なのか」と問われ「たろうだよ」

といった調子だ。ちなみに、だれがツイートしているのかとの質問には、「俺」(5日)、「うちの秘書にそんな暇はない」(9日)と返している。

「ノリが好き」と言われ、わずか3分で反応

   ネットニュース編集者である筆者から見ると、河野氏がSNSでウケるポイントは、大きく分けて「意外さ」「即レス」「いじられ力」の3点にある。まずは、一般ユーザーとフランクに会話する「意外さ」。現職外務大臣の肩書はもちろん、父に洋平氏、祖父に一郎氏(元農相)を持つ、いわゆる「政界のサラブレッド」ながら、それを感じさせない姿には、好感を持つネットユーザーも多いようだ。

   インターネットの文脈をキッチリおさえているのも大きい。ネットには「くぁwせdrftgyふじこlp」なるスラングがある。これは感情の乱れから、うまくキーボードを打鍵できないことを表しているが、これとベーコンツイートの「^%£$+*・!%」は近いものを感じる。本人が意図したかは不明だが、ネット受けするセンスと言えるだろう。

   続く「即レス」は、即座にレスポンスすること。多忙な公務の合間に、自分に関係したツイートを見つけ、引用リツイートを繰り返している。たとえば5月17日には、「河野大臣、ノリがすき」とのツイートに、わずか3分後に「ノリだけかい」とツッコミ。この投稿は河野氏のアカウント(@konotarogomame)に宛てたものではないにも関わらず、すぐさま見つけ出して反応している。「エゴサーチ力」とも言いかえられるが、コミュニケーションの双方向性をはかるには重要だ。

ハンサムネタが醸し出す「アニキ感」

   最後に「いじられ力」だ。河野氏のレパートリーには「ハンサム」ネタがある。「おじさま」と言われると「おにいさま」と言い換え、「SPの人が格好良かった」とのツイートには「も(編注:SPの人も)」と訂正させる。「よく見ると男前やな」と言われれば「すぐに気づけよ」、「なんかイケメンに見えてくる」には「もともと...」とやり返す。まるで従兄と接しているような、適度な距離での「アニキ感」も持ち味だ。

   安倍内閣の「もうひとりの太郎」こと、麻生太郎財務相兼副総理も、外相時代にネット人気を集めていた。麻生氏はマンガ「ローゼン・メイデン」を読んでいたとされることから、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で「ローゼン麻生」なる愛称で呼ばれ、その人気が首相就任の一助となった。「ベーコン河野」は、どうなるか――?

(J-CASTニュース編集部 城戸譲)

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