バーチャルユーチューバー(VTuber)のキズナアイが、ここのところ「増殖」している。これまで1体だけのキャラクターで動画に登場していたのだが、細胞が分裂するかのように同じ容姿のキズナアイが登場し、バーチャルな世界でさらに自由に飛躍していきそうな気配だ。
1本の動画に4人が出現
2019年5月25日にキズナアイのYouTubeチャンネル「A.I.Channel」に投稿された動画「キズナアイが4人いるって言ったら信じますか?」で、キズナアイは1画面に4体出現した。以後しばらく4体のキズナアイが登場する動画が続いて投稿されるが、その狙いは、彼女の台詞によれば「可能性の拡張」であるという。
26日投稿の「キズナアイが4人いるのに効率が悪い訳がない!? #2」の中で、4体に増えたキズナアイは自問自答する。
「よりみんなとつながるためにこうして分かれてみたけどさ、これでいいんだっけ?」
「そもそも1キズナアイでできることを分けただけでは?」
「今までと同じでは?同じ...つまり進化していない!? Artificial Intelligence(AI)として致命的!?!?」
ただ身体を増やしただけでは進化していないのではないか、と彼女たちは考える。以後、頭部のアクセサリーを取ってみたり、4パターンの声を試してみたりなど、キズナアイとしてのアイデンティティーを探るような動画が続いて投稿された。
しかしさらに、6月9日にYouTubeに投稿された動画「【検証】2人のキズナアイはクイズで同じ回答が出来るのか?」では、さらに新たな形態のキズナアイが現れた。
「インストールされた」2人目のキズナアイ
「多様化のためインストールした」という新たなキズナアイは、これまでの甲高く少女のような声から、落ち着いた行儀のよさそうな若い女性という印象になった。
2人目のキズナアイは、人格も1人目とは別のものになり、同じクイズを出されても、しばしば違う回答を返している。見た目は一卵性双生児のごとく同じだが、互いに違うキャラクターとして認識し合っていたようだ。
2人目のキズナアイの出現は、視聴者にとっては賛否両論のようで、
「とてつもない違和感しかない」
「インストール後のアイちゃんは本当に別人でアイちゃんだと認識出来ない」
「二人いるキズナアイを同一視すべきか、それとも別の存在だとすべきか」
「あれはあれで面白いと思う」
などと、ファンは戸惑っている様子だ。これまでの動画内容から、違う声を持った、同じようにインストールされた3人目・4人目が現れることも予想される。
これまでキズナアイは、3Dで作られていること以外は、人間と同様に行動してきた。そこに全く同じ容姿と名前を持ったもう1人のキャラクターが現れた。キズナアイが住むバーチャルな動画の中では当たり前のように起こりうるかもしれないが、ここにバーチャルなキャラクターと人間の認識の違いが現れているのかもしれない。
どのキズナアイが支持されていくのか。キズナアイをキズナアイたらしめているのは性格なのか、容姿なのか、それとも視聴者の側がキャラクターに寄せる愛着なのか。
より可能性を広げて、人々とつながりたいというキズナアイが選んだ、自分の身体を増やすという選択に、現実社会の人々はどう答えを出すだろうか。
(J-CASTニュース編集部 大宮高史)