加熱する貿易戦争 中国が「抜かずの宝刀」を抜く日はあるのか

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「武器にする余裕はない」(金融関係者)

   これともからんで、人民元の相場が問題だ。足元で1ドル=6.8~6.9元台と、米中摩擦激化の過程でジリジリと元安・ドル高が進んでいるのは、前記のように、中国の「稼ぐ力の衰え」の反映だろう。

   ただ、米国は中国の輸出が有利になる元安には厳しい視線を向けており、米財務省が5月28日に発表した半期為替報告書で、円安誘導の疑念を向ける日本などとともに「為替操作国」の疑いがある9カ国の一つとして「監視リスト」に指定している。

   一般に、元安の限界と市場が意識するのが1ドル=7元で、現状はこれに近づいている。最近の米国債売却は、元安を抑えるために元を買い支える資金確保が目的との見方もある。

   こう考えると、論理的には米国債売却は中国にとって米国経済に打撃を与える武器になりえるとはいえ、実際に実行するのは難しい。中国は、輸出に有利になる元安を一定の幅で容認するものの、大幅な元安=資本流出という悪夢は避けたいのが本音。2015年に不用意な元切り下げをきっかけに、元安と資金流出に歯止めが利かなくなって株も暴落するという苦い経験をしており、「米国の制裁もあって景気が思わしくない中で、保有米国債の増減を『武器』にする余裕はない」(金融関係者)と見る向きが多い。

   トランプ政権も、元安批判はいいが、元買い支え資金確保のための米国債売却は、米国債相場押し下げ、つまり米国の金利上昇要因になるというジレンマも抱える。

   新冷戦などと言っても、米中の経済関係は多面にわたって絡み合い、相互依存関係にある。両国の駆け引きは神経質な展開がまだまだ続くことになる。

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