容易に「抜けない」理由
具体的には、米国債が売られれば値下がりする。債券の値が下がると、金利は上昇する。トランプ大統領は景気拡大を持続するために金利引き下げに躍起で、米連邦準備制度理事会(FRB)に露骨に圧力をかけているくらいだから、中国の米国債売却で市場金利が跳ね上がるような事態は米国経済に打撃を与える可能性が高く、トランプ大統領としてはやってほしくない政策なのは間違いない。
一方、米国の市場が大混乱に陥れば、それは世界に波及し、中国にも跳ね返ってくる。巨額の保有米国債を一度に売れるわけもなく、売って値下がりすれば、売らずに保有する米国債は巨額の評価損を抱えることになる。中国にとって「宝刀」ではあっても、容易に抜けない、あるいは抜きたくない最終手段と言える。
実は、3月の1カ月で中国の米国債保有が204億ドル(2兆2000億円)の大幅減になり、市場では「関税への報復か」とささやかれた経緯がある。ただ、最近の動向を見ると、2018年9月以降、中国の売り越しが目立っており、3月末の保有残高は2年ぶりの低水準まで落ちている。米による制裁関税など中国の稼ぐ力を徐々に弱めているため、中国の米国債を買う余力が弱まっているという見方が市場では強まっている。