米中貿易戦争は双方が関税をかけ合うなど解決の見通しは立っていない。関税合戦では輸入額が多い米国に分があるのに対し、中国側は2019年6月1日の報復措置で大半の輸入米国製品に報復関税を課したことになり、手詰まり感も漂う。
そんな中、追い詰められた中国が「抜かずの宝刀」を抜くのではないかとの観測も出始めた。
実行なら市場大混乱は必至、しかし...
中国からの米国の輸入は年間約5500億ドル(約60兆円)、対して米国からの中国の輸入は約1500億ドルにとどまる。
米国は5月13日に約3000億ドル分の同国製品に最大25%の関税を課す対中関税「第4弾」を正式表明。実施時期は明確ではないが、これまでの2500億ドル分に加え、ほぼ全面的に関税を上乗せする構えだ。
これに対抗して中国は5200品目の米国からの輸入品に2018年9月から上乗せしていた5~10%の追加関税を、6月1日から10~25%に引き上げた。今回の対象輸入額は600億ドル。とはいえ、これでも昨年来の累計で米国からの全輸入額1500億ドルのうち関税対象は1100億ドル止まりで、規模での劣勢は明らかだ。
このため、関税以外の報復手段として一部でささやかれるのが米国債の売却だ。
日本や中国など対米貿易などで稼いだ黒字をすべて本国に還流させるわけではなく、中央銀行など金融当局が保有する外貨準備のドルは、米国債に投資されている場合が多い。その米国債の世界一の保有者が中国で、3月末で1兆1205億ドル(約120兆円)にのぼる。ちなみに、日本は1兆ドル余りを保有して2位だ。中国が保有債券を大量売却すれば、市場が大混乱に陥るのは必至だ。